16
side.東宮 帝
「くそっ、」
今日、花のこの別荘に来てから俺の心の中のなにかが妙に騒いでいた。
大和と旅行に来るのが楽しみだったはずなのに、今はまったく大和に興味がない。
俺はこの気持ち悪いのを取り去るために眠りについた。
***
『みーくんっ!』
俺は夢を見ていた。
夢の中で、白に近いふわふわの金髪で幼く可愛い子が同じく幼い俺の手を引っ張っている。
おそらく、これは俺がこの子・・・めぇに会ったばかりの頃だろう。
『めぇ?どこに行くんだ?』
『めぇのおへや!』
そう手を引かれて走っているこの場所に俺は見覚えがあった。
というか、花の別荘にそっくりなのだ。
『みーくん、ここ!』
『・・・ここ?』
めぇは嬉しそうに階段の横にある扉の前に立ち、扉を隠すように置いてある植木の下から鍵を取り出した。
『ここ、めぇのひみつのおへや!』
めぇはどこか金持ちの家の子供なのだろうが、いつもここにいて、俺もめぇに会うためによくここに来ていた。
ここに来るとだいたいこの部屋でめぇと二人で遊んでいた。
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