「あ、やっと来たー。遅いよ英知さん。早くこの馬鹿連れて帰ってー」


しばらくして店にやって来たのは、柊の婚約者である関 英知さん。柊を迎えに来たのだろう。


「迷惑をかけたな、めぐ」

「ほんとにねー」


英知さんは店の隅に隠れるように固まっている柊を抱き上げると俺にそう言って帰っていった。


「うわぁぁああああん!!めぐちゃんのいじわるー!」


なんか喚いている柊はもちろん無視の方向で。


「あ、いらっしゃいませー」


すると、英知さんたちと入れ替わるように店内にお客さんがきた。
ちゃんと普通のお客さんもときどき来るんだからね。ただ、常連の色が濃すぎて・・・


「めっちゃ美人じゃん、!」
「あれ、まじで男かよ!」


だがしかし、常連以外で俺の店に来てくれるのは噂を聞いた馬鹿ばかり。
その噂というのが『女装しているとてつもなく美人が店長をしている』というもの。

それは仕方ないことだと思う。あれから俺は昔のように髪を伸ばして女装をしているから。


「いらっしゃいませ」

「お姉さんまじで男なの?」
「ほんとは女でしょ?こんな可愛いとかありえないわ」

「可愛いだなんて嬉しいです。けど、俺は本当に男ですよ」


カウンターに座った男二人は俺に詰め寄ってきてそんな質問をしている。
周りの殺気が怖いからね。とくに夕陽!包丁直してまじで・・・



「俺、店長さんなら男でもイケそうだわ」
「あ、俺も!」


男たちは興奮していたらしく、誰かが店内に入った音に気づかなかった。



 


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