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「兄から聞いてたんですけど、聞いてた通り可愛らしい人ですね」
美夜子さんは爽川にそっくりな顔でにっこり笑ってそう言うと、「ね?」とお母さんに同意を求めていた。
「・・・」
「こら、めぐみ。美夜子さんが話しかけているだろう」
「え、?あ、はい・・・?」
爽川の家族はあいつが俺にやったことを一切知らない。
みーくんが海外に飛ばしたのだが、表向きは海外留学ということになっているのだ。
俺は親父に注意されて俯かせていた顔を急いで上げて話は聞いていなかったが何となく頷いた。
「めぐみさんは兄と仲が良かったんですよね?」
「っ、は、い?」
「兄からよく聞いてたんですよ、めぐみさんのこと」
「っ、そう、なんですか・・・」
爽川から俺の話を聞いている。
そう聞いた瞬間俺は自分の体が凍っていくのがわかった。
「、あの・・・お手洗いに行ってきます」
「待ちなさい、めぐみ」
「っ、離してください!」
ここにいるのが耐えられなくなった俺はそう言って立ち上がったが親父に腕を掴まれ、腕を振り払って部屋を出てすぐに出口の方に向かって走った。
「めぐみ!」
後ろからすぐに親父が追いかけてくるのがわかり、俺は全速力で走った。
「めぐ!」
「っ、!?」
すると、曲がり角を曲がった瞬間、俺はいきなり誰かに腕を掴まれて引っ張られた。
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