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花に命令されて屋上を出た俺は特にすることもなくフラフラと中庭等辺を歩いていた。
「あんな姿を僕以外に晒すなんて許せない・・・」
俺は何やら不吉な声が聞こえ、そいつに気づかれないようにこっそりその様子を伺うことにした。
「もう我慢できない・・・だいたい、なんで僕じゃなくて鷹野なんかが僕のめぐみに近づいているんだ」
その男・・・爽川はいつもの爽やかさの欠片もなくむしろ不気味の一言だった。
花は気づいていないんだろう。こいつが花に対してこんな感情を抱いていることに。きっと俺が最初に屋上で花と話したときに言った「気を付けろ」という言葉も、大和に対してだと思っているだろう。
俺はそう思いながら花に注意するように言わないとな、と頭で考えてその場を去ろうとした。
「今日、君は僕のものになるんだよ」
去る間際、爽川のその言葉が俺の頭の中に入ってきて俺はもう一度その方向を振り返った。が、既に爽川はいなかった。
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