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家から逃げたかった...双子の兄から逃げたかった...
「空ァ、もっとこっち来いよ」
「空は俺のだし。触んな徹平」
「もうお前ら喧嘩すんなよ!俺は誰のもんでもねぇぞ!」
家の前、聞こえてくるのは楽しそうな男たちの会話。
俺は家に入ろうと手をかけていた玄関の取ってを掴んだまま固まった。
入りたくない...俺はこいつらが嫌いだ。
そしてそれよりも双子の兄が嫌いだ。
「...藤?」
「っ、!?...ぁ、かい、とさん...」
中に入るのを躊躇って、いっそのことこのままどこかに消えてしまおうかと考えていると、後ろから声が聞こえた。
そこに立っているのは空の仲間である橘海斗がいた。
「藤、こんなとこでなにしてるの?まさか逃げようなんて考えてないよね?」
「コンビニ、行きた、い...です、」
「コンビニ?何が欲しいの?藤の好きなものなら全部買ってきてあげたよ?何が足りないのかな?」
海斗のその言葉に海斗の手元を見ると両手に大きなコンビニの袋を持っていて、たしかにその中には俺の好きなお菓子や飲み物が入っている。
「...っ、」
「ほら、空も待ってるし中入るよ」
(いや、だっ...!)
俺のその訴えた言葉にできることなく、俺は海斗によって家の中に入れられた。
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