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「桃真、あの転入生の名前は?」
転入生くんの言動を見ていた桜治さんは会長の顔で桃真くんにそう聞いた。
「長谷川 空也、って言ってたにゃー」
「長谷川 空也...桂太、調べといて」
「了解や。んな、俺は先に戻っとくな」
桜治さんにそう言われた桂太さんは早々とご飯を食べ終わるとそう言って、二階にもある出入り口から出ていった。
「お前らが椿の仲間か!?名前何て言うんだ!?俺は長谷川 空也だ!!」
桂太さんが出ていったのとほぼ同時に転入生くんが俺たちのところにやって来た。
後ろにいる椿さんは申し訳なさそうに眉を下げている。
「なあ!名前教えろよ!」
「っ...、」
転入生くんは先ず近くにいた楓さんにそう言って詰め寄っていた。楓さんは全く興味なさそうで無視している。
俺はその転入生くんの声やしゃべり方があいつに重なって体を強張らせた。
「...ふーじぃ?どうしたのぉ?」
「だい、じょーぶ...」
違う。空がここにいるわけない。だいたい、空がここには入れる学力や財力を持っているわけがない。
俺は自分の考えを心の中で打ち消した。
「でもぉ、顔色悪いしぃ...みい心配なんだけどぉ」
「ほんと、平気だから。桜治さんたちには言わないで」
「しょうがないなぁ...もし無理だとみいが判断したらぁ、連れてくからねぇ」
「うん。ありがとう」
御井はそう言いながらも、安心させるように俺の手を握ってくれた。
その暖かさに少し気が緩んだ。
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