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「椿!!」
俺たちがいつも食事を取るテーブルは二階席の真ん中にある大きなテーブル。ちなみにこの学園には役員専用席みたいなものはない。
二階にいる俺たちの耳にばっちり聞こえるほどの大きさで、誰かが一階から椿さんを呼んだ。しかも、名前で。
「...ちっ」
「っ、...」
その声を聞いた椿さんが珍しく舌打ちをしたのに、俺は思わず体を震わしてしまった。
「椿、藤がビビってる」
「...ああ、藤くんごめんね。怖かった?」
「ビックリした、だけ...」
それを見逃さなかった桜治さんが椿さんに注意するように言うと、椿さんは眉を下げて俺に謝ってきた。
俺が首を横に振ってそう言うと、椿さんは困ったように笑って俺の頭を撫でた。
「椿!!こんなところにいたのか!!探したんだぞ!」
すると、声の主らしい生徒が後ろに二人の生徒を引き連れて階段を上がってきた。
椿さんはそれを見た瞬間に立ち上がって、俺たちから離れるようにその方向に近づいていった。
「ただいまにゃー...あれ、転入生らしいにゃー」
暫くすると疲れた様子の桃真くんが帰ってきて、椿さんの前にいるボサボサのマリモみたいな黒髪に黒渕眼鏡をかけた男の子を指差してそう言った。
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