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「...ねぇ、」
休み時間になり、日向くんがどこかに行ってしまい、俺は一人になった。
周りが好奇の視線で俺を見ているのがわかる。
すると、隣に座っている男の子が話しかけてきた。
さっきまで...てか授業中も爆睡してたのに。
「...君、ソラァ?」
「...は?」
男の子の口から出てきた名前は俺の双子の兄のものだった。
俺がこいつを警戒していると、そいつは急にクスクスと笑い始めた。
「...なに」
「ごめんねぇ、みいの勘違いみたぁい。あまりにもそっくりだったからさぁ」
そいつはほんとに謝る気があるのかわからないくらい緩い話し方でそう言うと、自己紹介をしてきた。
「みいは御井明だよぉ。君はぁ?」
「...一ノ瀬、藤」
「藤ねぇ。仲良くしよぉよ」
そいつは俺が空じゃないとわかると、さきほどまでと警戒していたようの雰囲気はなくなり、ふんわりと微笑んでそう言った。
「...よろしく」
「わぁい。初めてのぉ友達ぃ」
「...え?」
俺がそう言うと、御井はとても嬉しそうに微笑んだ。
俺が耳を疑ったのは仕方ないだろう。
「みいねぇ、友達になりたいってぇ、思う子今までいなかったんだよねぇ。だからあ、藤は初めての友達ぃ」
そう言った御井の顔は子供のようで本当に嬉しそうだった。
とりあえず、俺に友達ができました。
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