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「ここ、隠れてて」
「え?あのっ...」
「いいから。追われてんだろ?」
男の人は廃ビルに入って俺を物陰に隠すと、安心させるように俺の頭を撫でてその近くにある瓦礫に腰かけた。
「藤!...っ、サクラ」
「よう、海」
海というのは海斗のSKYでの通り名のようなものだ。
どうやらこの人と海斗は知り合いのようだ。
「...ここに男の子来なかったか?」
「男の子?」
「ええ。黒髪に藤色の目をした男の子だ」
「知らねぇな。俺はずっとここにいたからな」
「ならいいよ。邪魔したな」
海斗はいつもの俺に向かって喋るときより冷たい口調でそう言うとその場を去っていった。
「っ...はぁ、」
海斗がいなくなったとわかり、俺は詰めていた息を吐いた。
自分で思っていたより緊張していたようだ。
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