Night



 白い肩が隠れるように布団をかけてあげると、長い睫毛が動いた。美しい黒髪を揺らして僕を見つめる叶。近くからする叶の香りに満足した僕は頬をなぞり、微笑んだ。


「起こしちゃった?」
「大丈夫。テル、ちゅーー。」
「はいはい。ちょっとだけ。」

 事後にキスをするときはお互い短い時間だけだと決めている。僕達は一瞬だけ唇を交わして微笑みあった。

「あのね、輝気。」
「ん、なに?」
「私は輝気がすごく好きだよ。」
「何、いきなり。」

 いつもへらへらしている叶も、僕の双眼を見つめて笑わずにいた。

「輝気は自分が普通の人だと思ってるかもしれないけど、私はね、私の中で輝気はとっても大きい存在なんだよ。」
「・・・・・・。」

「毎日自分を高めてるし、自分を大切にしてる。少し前の輝気とは、大分変わったね。どんな輝気だって好きだけど、私は今の輝気が前以上に輝いて見えるよ。なんて言ったって私が愛してる輝気は、私のことをすごく大事にしてくれるし、私にだけ子供な所を見せてくれるし、私に甘えさせてもくれるし、そういうの、すっごく伝わってくるよ。いつもありがとうね。」

 叶は優しく僕の頭を自分の胸元に引き寄せると、優しく優しく抱きしめてくれた。

「頑張ってるね、輝気。頑張りすぎて、死んじゃイヤだよ?超能力があってもなくても、あなたは輝気なんだから、何よりも絶対に自分の身体を優先するんだよ?じゃなきゃ私が悲しくなっちゃうんだから。」
「・・・うん。」

 僕の目からはなぜか涙が零れ落ち、柔らかな白いデコルテを輝かせた。

「私は大好きな輝気が生きていてくれてうれしい。幸せだよ。生まれてきてくれてありがとう。大好き。・・・これからも、無理しないでね。お願いよ?」

 叶が紡ぐ沢山の愛の言葉は、僕の胸にはとっても響いていた。こんなに幸せな誕生日は久しぶりだ。しばらく見ていないお母さんとお父さんの笑顔を思い出す。僕は両親に感謝した。産んでくれてありがとう。こんな素晴らしい人と巡り合わせてくれてありがとう。僕はやっぱり短いキスをして、叶を抱き寄せて眠った。いつかの未来、白いドレスに身を包んだ彼女を横抱きにしていると信じて。




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