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 今日はあの花沢輝気くんの誕生日だ。女の子たちは皆花沢くんの話題で持ち切りだし、男の子たちだって花沢くんについてまわってる。どこまでも完璧でどう見たっていい人だしキラキラ輝いてる。でも最近花沢くんは変わってきていると思う。なんだか前みたいに変な違和感を感じることはなくなったし見せる顔だって笑顔だけじゃなくなった。なんでだろうか、私みたいなのがこんな風に思っていても、花沢くんにはきっと伝わらないのに。今日はあの花沢輝気くんの誕生日だ。みんなプレゼントを持ってきていたりするだろう。でも、私だって一番に彼の事を祝いたい。以前聞いた話だと、彼には恋人はいないようだしこの機に告白・・・なんてね、できるわけないよ。そして私は空を見上げた。桜が散り始めている。桜も私の想いみたいにずっと続いていればいいのに、なんて卑屈になってしまう。こんなんじゃだめだよ!花沢くんに顔向けできないし・・・

「僕がどうしたの?」
「はっ、花沢くん!」

 花沢くんはいつもみたいに私の横にいつの間にか現れてそしていつもみたいに微笑んだ。

「ふふふ。」
「・・・。」

 えっ・・・何?なぜ花沢くんはこちらを見たまま笑顔でいるのだろう。何か考えているのだろうか。それにしても人の顔を見ながら物事を考えるなんて失礼しちゃう。でも花沢くんはそういうことをする人ではない。たまにぼーっと何かを考えている時もあるけど、その時とは視線が違った。何かを待っているような。

「・・・ど、どうしたの?」
「言ってくれないの?」
「え?」

 花沢くんは少しだけ眉を下げて私を見た。

「誕生日おめでとうって、言ってくれないの?」

 つい身体が氷のように固まり、喉が詰まった。花沢くん、私のそれを待っていたの?そこまで欲張りな男だっただろうかと思ったが、私はどもりながら「お、お誕生日おめでとう。」といえた。朝会えた時にすぐ言えばよかったと後悔する。なんだか花沢くんに申し訳ない。

「・・・もしかして、知らなかった?だったらごめん。」
「えっ?!いや、そんな事ないよ!ただなんか、タイミングがつかめなくて・・・。」
「そっか、嬉しいな!」

 なぜ花沢くんはこんなに万遍の笑みをしているのだろう。桜がどうのなんて全然関係ないみたいに。花沢くんが笑って立っているだけでこんなにも絵になるなんて。それから花沢くんはそのまま私の手を掴んだ。え?なんでこの人はこんなに気分がいいのだろう。私は随分と困惑して花沢くんに手を取られてそのまま何もできなかった。

「僕、夢緒さんの事が好きなんだ。」
「・・・?!」
「無理矢理言わせたみたいだけど、夢緒さんにおめでとうって言ってもらえて、すごく嬉しいんだ。ごめんね。」

 頭が真っ白になる。なぜ花沢くんの後ろはピンク色なのだろう。桜が散っているのか。そんな事も考えていられなくて、なんだかよくわかんなくなって、私は目を丸くして突っ立っていた。今度はにやっと少しだけ片方の口角を上げた花沢くんが私の手を両手でつつみこみながら囁いた。

「でも、夢緒さんが僕の事好きなの知ってるから、ずるい事しちゃった。」
「えっ、は?!」
「ごめん、違った?」
「いや、違うとかじゃないんだけど・・・。」
「そっか!それじゃあ明日からもよろしくね!」
「えっ?!あっ、あの!!」

 私は花沢くんのペースに完全に乗せられて、そのまま小走りで走り出した花沢くんを止める。そんな、これが現実だったら、こんなことになるなんて!私は随分向こうで立ち止まった花沢くんに向かって声を出した。

「好きーーーーっ!花沢くんお誕生日おめでとうーーっ!!」

 遠くてよくわからないけど、花沢くんは私に向かってぶんぶんと手をふった。ああ、なんて恥ずかしい事をしてしまったのだろう!だけどすっごく満足だ!私は花沢くんの歩いて行った道を弾む足取りで続けた。でも周りからの視線が恥ずかしくて、すぐに走り出した。ちゃんと花沢くんにプレゼントを渡さなきゃ!




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