Morning



 昨日の夜はすっごく年上の彼女が一番に僕を祝ってくれた。何をと言われると一言、僕の誕生日だってことなんだけど、12時57分に駆け込んできた彼女は僕から見たら最高に輝いていた。僕は所詮中学生だし、彼女は大学生になりたてだ。3月から一人暮らしを始めた彼女は高頻度で僕の家に来る。たまに僕なんかでいいのかなって思うときもあるけど、彼女はそんな僕の事を「好きだ」って言ってくれる。僕はやっぱり彼女が好きで、いつも甘えてしまうんだ。叶は決して年上ぶらないし、そう簡単に甘えさせてくれないタイプだと思っている。けど彼女は僕だけに甘えさせるし僕だけに年上ぶる。そんな様子が可愛くて仕方ないんだ。さて、惚気は置いといて、僕はそんな彼女に飽きられない様に必死なんだ。僕は大人ぶってインターネットで調べた"そういう事"を平気な顔で彼女にするんだ。柔らかい女性らしい唇をそうやって愛撫して、必死で彼女との夜を過ごしてる。そうして僕は彼女より早く起きる。叶の寝顔が見たいんだ。僕が必死にならずに彼女の無防備な姿を見ることができる時間だからだ。いつも布団から出たがらない彼女よりも先にご飯を作って制服を着る。カレンダーには惜しげもなく4月13日に赤いペンでハートが書かれている。叶が書いたんだろう。僕のカレンダーなのに。テレビをつけて虫の鳴る腹に気づかないフリをしながらぼーっとする。僕はいつまでこうして彼女に愛されていていいんだろう。僕なんかでいいんだろうか。僕がそう途方にくれていると、朝食の用意されたテーブルの前に座る気配。叶は目が開いていない状態で「輝気ー・・・」と呼ぶ。昼にはこの事を忘れているだろう。彼女にとっては何気ない一言でも、僕はこうして子どもみたいな彼女が僕の名前を呼ぶのがとても心地いい。僕と叶は朝食を食べ始めた。

「輝気が生まれてきてくれたことが嬉しいよ。」
「・・・何、急に。」
「んふふ、なんでもー。」

 にやけて僕の作った卵焼きを口に放り投げた。・・・そういう事言われると、すっごく困っちゃうんだけどな。僕はこんな彼女の何気ない一言に弱くて、一日中考え込んでしまう。本当は素直に喜びたい。ありがとう、僕も叶がいてくれるだけで幸せだよなんて恥ずかしげもなく言えるようになりたいんだ。そうして必死に背伸びして、やっぱりかっこよくない僕になってしまう。愛する人に愛を伝えるのがこんなに難しいとか思ってなかったんだ。それを中学生で考えることもね。

「テル、おかわり。」
「太るよ?いいの?」
「いいの!」

 ぶすっと膨れっ面をしてブッサイクな顔になる叶が年上だとは思えないけど、やっぱりきっと、僕のこんな葛藤はお見通しなんだろうな。朝食を食べ終わり、洗い物は彼女がしてくれるらしく、二人で並んで食器を片付けて歯を磨く。こうして並ぶと僕の方が2センチくらいチビだ。鏡の前を見るととてもかっこいいとは言えない顔をしている自分と目があった。僕より早めに歯を磨き終わった叶はソファに身体を預けた。僕はもう学校へ行かなければならない。「行ってきます。」と彼女の後姿に声をかけた。玄関で靴を見つけた時、ぐっと体重が後ろにかかる。

「・・・離れてくれないと学校いけないよ。」
「うん。そうだね。」
「寂しいの?」
「んーん、寂しくないよ。」

 言葉とは裏腹に、僕の腰に巻き付く腕は力を増す。寂しくないなんて嘘でしょう?僕は頬が緩むのに逆らえなかった。

「大丈夫、早く帰ってくるよ。」
「うん。いってらっしゃい。」
「行ってきます。」

 そう言って彼女にキスをすると腕を話してくれた。こういう所も好きなんだ。可愛いでしょ?俺の彼女。どんなに大人ぶっても、子どもなのはどちらも一緒なのだろう。僕は青空の下を鼻歌交じりで歩いた。こういう日は足取りが軽い。素敵な朝の始まりだ。




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