まったく、まったく、甘えん坊だ
※テルがシスコン気味。恋愛要素あまりありません。


 世間一般的に、兄とは優しいしスマートだし妹の勉強を手伝ってくれたりなんだりしてくれるし、見本のような男だと思う。しかし、私の知っている兄はどうだろうか。そりゃあ優しいしスマートだし勉強だって手伝ってくれますよ。でも周りの兄は妹の太ももに頭を埋めて泣き言を言うなんてことは聞かない。髪の色が薄い私の兄、輝気くらいなのではないだろうか。
 お兄ちゃんはたまにこうする。携帯にメールで今日はご飯作ってよ、と送られてくる。お兄ちゃんとは訳あって別々に住んでいるのでお兄ちゃんの住んでいるアパートに行き、ご飯を作る。相変わらず自分でも作るようで、冷蔵庫の中身はきちんとしていた。お兄ちゃんは顔がとてもいい。だから「美味しい。」なんて笑顔で言われると流石に妹でもドキッとする。私もそんな顔の造りになりたかったのに。
 さて、ここからが本題に触れてくるところだ。お兄ちゃんとたわいのない話をしていると、お兄ちゃんはいつも近くに来る。段々と、徐々に近づいてくるのだ。その様子がなんだが兄妹ではないみたいでちょっと気持ち悪い。

「今日は担任がほんとにうるさくてね、」
「・・・うん」
「・・・話聞いてないでしょ。」
「うん。」

 まるでうとうとしているのかと錯覚してしまうように俯いてゆく。お兄ちゃんはそのまま私の太ももにぽふん、と柔らかい髪を揺らして飛び込んだ。わたしは決まってその頭を撫でてあげるのだ。
 だって、数年前から意味のわからない奇妙な団体に家族ごと自分が追いかけられ、中学生なのに私達家族を守るために一人を我慢してきたお兄ちゃんに向かってふざけんな一人で泣いてろ、なんて事言えない。それにそれが普通だと思うし、私がお兄ちゃんのような環境で過ごしていれば多分同じようにしていただろう。お兄ちゃんからしてみると、親よりも言いやすく年齢の近い妹が甘えさせてくれるのはとても嬉しいことだとおもう。前も言ってたし。私はお兄ちゃんが私達を守ってくれている事に対してや、お兄ちゃんが私のお兄ちゃんでいてくれることに絶対的な感謝を捧げる。こんなこと、朝飯前だ。冒頭にこんな兄はいるか?と言っていたが、こんな兄もアリだろう。

「今日はどうしたの?」
「・・・勉強がうまくできないんだ。」
「そっかあ。どうして?」
「よく理解できないところがあってね?先生に聞きたいんだけど、僕ってみんなから完璧だと思われてるだろ?だから言いづらいんだ。」
「そっか。そっかそっか。大変だったね。頑張ったね。」

 私がお兄ちゃんの髪をなでる度に、お兄ちゃんは頭を擦り付けてくる。親がいなくて甘え足りないお兄ちゃんのことを気の毒に思いながら、精一杯甘えさせてあげよう。

「純・・・。もっと撫でてくれ・・・。」
「はい。こう?」
「そう・・・。ありがとう。」
「お兄ちゃん、このまま寝てもいいよ。」
「ん・・・。」

 そのままお兄ちゃんは黙り込んでしまった。私の腰に抱きついていた腕はポト、とフローリングの上に落ちた。心地よい寝息が私の足元から聞こえる。お兄ちゃんが安心して眠れるなら、私はとっても嬉しいんだ。
 それに、お兄ちゃんが甘えん坊でも構わないでしょう?私だって甘えられるってことなんだから。
 ありがとう、お兄ちゃん。明日も頑張ってね。そう願ったお返しのように、お兄ちゃんは眠りながら微笑んだ。


***
企画サイト「月の背中」様に提出しました。



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