看病
 テルくんがまた熱を出した。テルくんは強い敵と戦ったあととかに熱が出るみたいだけど、私の知らないうちに誰かと戦ったのだろうか。気になることは山ほどあるけれど、とにかく一人で苦しんでいるテルくんを放っておくわけにはいかなかった。今までずっと一人で頑張ってきていたテルくん。私だったら泣いてしまうし苦しいし誰かに甘えたくなる。テルくんもそうかもしれないと思っていたのは当たっていたようで、テルくんは私がチャイムを鳴らしてすぐに出てきた。超能力を使って鍵を開けてくれれば勝手に入ったんだけどなあ・・・。顔は真っ赤で汗はだらだらと浮き出ており、冷えピタは額から剥がれて使い物にならなくなっていた。薄いくまさんの印がついたカットソーに厚手のジャージを重ねていた。息は上がっており、肩で呼吸していた。そんなテルくんがあまりにも辛そうで、思わず名前を呼んだ。

「て、テルくん、大丈夫・・・?」
「・・・純ちゃん」

 力強く腕を引かれてギュッと抱きしめられる。髪に顔を埋めて「純ちゃん、純ちゃん・・・」と熱っぽい声で囁いていた。私が「うん」とか「待たせてごめんね」とかいう度にぎゅうぎゅうしめつけてくるテルくんの腕。熱を出していても男なのには変わらない。背中をぽんぽんと摩ってあげるとゆっくりと体重がかかってきて、腕から力が消えてゆく。小さな寝息が聞こえてきたところで耐えきれなくなり玄関で崩れ落ちてしまった。仕方ないのでテルくんのベッドまで自力で運び、玄関の鍵を閉めて買ってきたものを広げる。薬は飲んだみたいで、テーブルの上に置いてあった。とりあえずポカリスエットをコップに注いでテルくんの元へいく。その時に額から落ちていた冷えピタの存在に気づく。とりあえず買ってきておいてよかったがテルくんの汗でべたついた前髪をかきわけて冷えピタを貼ると、眉間の皺が減った気がした。ベッドの横に座って苦しそうなテルくんの髪を撫でてやる。すると少しずつ目を開けたテルくんは私を見た。

「今水分取れる?」
「あ・・・うん、ほしい」
「じゃあ身体起こそっか」

 横からテルくんの背中に腕を差し込んで起こしてみたけれどびくともしない。意外と男の子の身体って重いんだなあ・・・。

「ごめ・・・ん、ちから、入らなくて・・・」
「ん、大丈夫。私の背中に腕回せる?」

 ベッドに乗って寝ているテルくんを抱きしめる。背中に腕が当たる感触がしたので、ゆっくり身体全体で持ち上げる。ホッとしたような、しかし疲れている顔でテルくんは申し訳なさそうに眉を潜めた。そんなテルくんにポカリスエットをあげると、ゆっくり口に含んだ。その様子になぜだかとても心配になる。

「テルくん、お腹すいた?」
「・・・すいた」
「じゃあお粥つくるね。大丈夫、すぐ戻ってくるから」
「うん・・・」

 テルくんからコップを貰い、すぐ取れそうな場所に置いてあげる。テルくんを寝かせてあげると、すぐにうとうとと船を漕ぎ始めた。その様子に一息ついてから台所へ向かった。







「テルくん、できたよ」
「んぅ・・・遅い・・・」

 ベッドの中で寝返りを打ちながらこちらを見るテルくんの顔色はマシになってきている。何よりそんなことが言えるんだから少しは治まってきたんだろう。機嫌が悪そうなテルくんを見てクスッと笑うと「何笑ってるの、はやく、お腹空いたぁ」とわがままを言う。「はいはい」と適当にあしらってお粥をテーブルに置く。テルくんはぶつくさと何かを言っているようだ。まだきちんと一人で起き上がれないようでゆっくり動いていたのですぐに手伝ってあげる。

「さっきみたいに抱きしめて起こしてくれないの?」
「もうできるでしょ、ほら」
「ちぇー、けちんぼだなあ」

 起き上がってぼーっとしているテルくんをよそにお粥をよそって息を吹きかける。「はい、どうぞ」と声をかけて口元へ運ぶとぷいっと顔を逸らされる。な・・・?!確かに美味しくないかもしれないけど・・・食べなきゃ元気にならないぞ・・・!むっとしてまた口元へ近づけるとぷいっと逆を向かれる。なぜ・・・

「テルくん・・・」
「やだ。あーんしてくれないと食べない」
「え?」
「あーんしてくれないとやだ!」

 ベッドの上で駄々をこねるテルくんはいつも爽やかでスマートに振舞ってたまに甘えてくれる、そんな子なのに、やっぱり中学生なのね。やだやだ!と言っているテルくんに笑いを堪えながら「あーん」と口元に運ぶとテルくんは打って変わって笑顔になり「あーん!」と元気よく言った。

「冷めてる・・・」
「駄々こねるから」
「つぎ!お腹すいたよー」
「わかりましたわかりました」

 まだ熱を持っているお粥を次々にテルくんの口に運ぶ。テルくんは笑顔で飲み込んで一粒残らず食べあげた。すごいなぁ・・・薬を飲ませるとまたうとうとし始める。よしよしと頭を撫でてあげると瞼を閉じる感覚が長くなってきた。急に私の指を握るテルくんに「なぁに?」と聞いてあげる。

「僕のことぎゅってして、一緒に寝よう・・・?」
「ん、いいよ」
「へへ、嬉しい・・・」

 私がベッドに入るともぞもぞと動いて私のところを開ける。まるで逃がすかと言わんばかりに私を全身で抱きしめる。脚でお尻から下を腕で腰を抱きしめられる。勢い余ってしまったのでテルくんの脚が壁に当たってドンッと間抜けに響いた。クスクス笑いながらテルくんの髪を撫でてあげると、私の胸に頭を乗せてすやすやと眠ってしまった。眠ってもすごい力で拘束するテルくんに驚きながら、私も瞼を閉じるのであった。



「ご、ごめん!お腹すいたでしょ?それにもう夕方・・・!風邪うつってないかな?!気分悪くない?ああーもう本当にごめん・・・顔赤くない?やっぱり熱出ちゃってるのかな・・・ごめんね・・・」

 すっかり寝て熱も下がったテルくんに散々体調を心配されるのであった。顔が赤いのはテルくんが暖かくて暖まってたからだよ。こうして君は強くなるんだね。どうか叶うならば強くなる度に支えさせてください。



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