冬になっても暖めてね
 学生の頃、霊幻くんが私のことを見ていたのは知っていたし、本人が気づいていないだけで結構周りは冷やかしたりしていた。それが迷惑になっていなかったのも本人が多少鈍感だったからみたいだけれど。そんな霊幻くんのことをふと思い出した道すがら、変な事務所を見つけた。霊とか相談所。霊とかってなんだろうとか思いつつも最近肩重いのも霊のせいなのかなとかぶつぶつと頭でぼやきながら中に入る。古臭い扉を開けたら新聞を読みながら暇そうにしている霊幻くんがいた。まさか霊幻くんがいるとは思っていなかったし、それは霊幻くんも同じだった。

「さ、佐々木・・・か?」
「霊幻くん、だよね?びっくりしたあ。」

 随分と時が経ち、顔立ちや体格が変わった霊幻くんを見て胸が締め付けられる。あの頃私は霊幻くんの気持ちに気づいていながら、数少ない霊幻くんに片想いする友人に気を使って自分の恋を諦めた。その頃の甘酸っぱい思い出が蘇るようで、胸が痛いくらい切なくなる。ありもしない心霊スポットの噂だとかを話して霊幻くんを外へ出した。霊幻くんとデートみたいなこと、してみたかったんだもん。自らの純な気持ちに反して、経験というのは悲しいくらい嘘をつかない。達者な口は霊幻くんをうまくいいまとめて食事へ誘う。霊幻くん、男っぽくなったんだなあ。やはり同僚とは違う何か誘われるものを感じてしまう。ごつごつした手から伸びる時計だとか、陽に照らされて少し透ける短くて明るい髪とか、当たり前のことから霊幻くんにしかないことまで全部素敵だって思えた。もう私、我慢なんてしないわ。霊幻くんも私のどうにかなろうという気持ちを察して言葉を交わすことなく相談所に戻ってきた。あー、なんか仕事なんかやめて、霊幻くんのところで働きたい。って感じさせるくらい霊幻くんは自由だった。性行為をしているときはなんだか可愛らしくて、項垂れたように下を向く霊幻くんがとっても可愛かった。その後私は霊幻くんにおんぶされて彼の家へ行き、雑に靴を脱ぎ捨ててシャワーを浴びた。瞼を閉じた時、霊幻くんは暖かい手で私の前髪を撫でた。

「俺、ずっとお前のことが好きだったんだぞ。」

 ・・・知ってる。

「こんな日を夢に見てたけど、まさかお前から来てくれるなんてな。」

 なんかムカつく言い方。霊幻くんは変わった。

「お前は俺のこと遊んでるのかもしれないけど、俺は今でもお前のこと・・・」

 ・・・え?

 それっきり、霊幻くんは話すことなく、静かな部屋には彼の寝息だけが響いていた。まるで子供みたいな、すぅすぅって寝息。私はそれにつられて、一緒に眠った。それもこれも、全部夏のせいだよ。私が霊幻くんと一緒にいたいことだって、これからのことだって。


途中からクリープハイプのラブホテルをイメージしてました。



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