★かいじゅうはわらわない


「オラオラ、借金取り立てにきたよ」
「わあ、お姉さん誰?」
「キリトリさ」
「図工でもするの?」

びっくりするほど純粋な瞳で私を見つめる女の子は、今回のターゲットだった
こんなに小さくて可愛い女の子から取り立てる事は初めてで、気が動転してしまいそうだった

「・・・すっとぼけてないで金出せよ。悪いようにはしないからさ」
「あ。あのおじさんからお金預かってるんだ!これ返せばいいのかな?」
「話せばわかるやつでよかったよ」

しかし、こんなにも事が早く展開してしまうなんて、私の出る幕ではなかったんじゃないか
これでは私が呼ばれた意味がない
(依頼主には悪い事をした気がするなぁ・・・)
「そんじゃ、1億ね。預かっ・・・」私が彼女の手にあるアタッシュケースを貰おうと手を伸ばすと
それは彼女の後方に追いやられ、丁寧に置かれた

「私、優香っていうんだ!遊んでからでもいいよね・・・?」

彼女の瞳の色が変わった、気がつくと視界が変わり、無駄な緊張感を無視することはできなかった




これが、彼女との出会いだった



「いっ・・たい・・・!」
「じっとしてな。もう、私にこんな本気出させたの、あんたくらいだよ」

ボロボロに負けた
巷に聞く借金取りのタツ。女の人なのに、そんなに強いのかなあ?
私の密かな好奇心は、いつしかタツと呼ばれる女の人と戦ってみたい、という意志になった
私も結構強い方かな、なんて思ったけど、彼女は私なんてへでもないくらいだった
黒い髪から覗く瞳は、優しかった


それから私はタツ姐さんの弟子になった
強くなってどうするかっていうのは、まあ、お父さんに勝つ、みたいなものでいいや
最初、タツ姐さんは、渋っていたけれど、私の様子を見て、優しく頷いた

「あれ、タツ姐さん。その人・・・」

タクシーに乗り、埠頭につくと、見慣れないスーツの男が立っていた
タツ姐さんは紹介をしていたけれど、正直この筋の人は苦手だ

「よろしくな。あ、俺は今、カタギだ」
「え、そうなんですか」

いや、絶対元やくざだよ
堅気だとしても、その顔は完璧に怖い人の象徴のようなものだった
彼は20歳で、私よりも年上だった
私は18歳で、高校になんか行ってない私は、家出少女のようなものだった
制服は堅苦しくて嫌いだ。スカートもスカスカする。
私は全身ジャージの長そでに短パン。お洒落なんてくそくらえ。
桐生さんという人は、私の様子を見て、どこか遠慮しているようだった
だって私、桐生さんが怖い。



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