∵季節外れの冬風


俺とハルは、歳こそ離れているものの、今まで喧嘩なんてしたこともない、平凡で幸せなカップルだった

そう、その日が来るまでは…









最近、6代目の様子がおかしい
それもそのはず、最近、恋人のハルが突然ぱたり、と現れなくなったのだ
いつもは毎日のように大吾のもとに現れていた
6代目も幸せそうだし、俺たち構成員から見ても、どう見ても普通のカップル。見ているこっちが癒されていた。
彼女といるととても幸せそうな6代目が、ハルが来なくなった瞬間、殺意に似た何かを漂わせるようになった
この状況はヤバイ。
なんとかしなければ…構成員たちの間ではハルさんの捜索、そして原因などを6代目にバレないように調査していた

「え?ハルさんが4代目と一緒にいたぁ?」

それは本当だろうな?と問うと、本当に本当らしい
前々から交流のあった2人だが、どうして一緒にいるのだろうか
6代目に伝えるべきか伝えぬべきか悩んでいたところ、その結果はすぐに出た
背後からの気迫と音
壁にめり込んだ拳
6代目は顔にこそ出さなかったが、怒っているような、複雑な様子だった









ハルと桐生さんが一緒に…?
話を聞いた瞬間、有り得ないくらい込み上げる怒り、そして虚しさと哀しさが心を支配していた
構成員から場所を聞き出し、すぐさまそこへ向かった
場所はチャンピョン街のバー
扉を開けると久しぶりに見えたハルの驚く顔と、同じく驚く桐生さんの顔が見えた

「桐生さん!!」
「なんだ」

落ち着いた様子で言う桐生さんは、俺の額から汗を湧き出させた

「…ハルも、どういうことですか?」
『ど、どういうことって…?』
「大吾、」
「桐生さん!どういうことですか!」

俺は怒りに任せ、怒鳴りつけた
いくら桐生さんとは言え、こんなことする人ではないことを知っているのに、その時の俺は冷静ではなかった

「大吾、落ち着け!」
「落ち着いていられますか!?もう2週間も会っていなかったハルが、桐生さんと毎日会っていたなんて!俺は…っ」
『大吾さん、待ってよ…!』
「なんだよ!?」

俺の腕に近づいたハルを振りはらった
その衝撃で、体の小さなハルが倒れそうになったところを桐生さんが支えた

「あ…」

俺、何やってんだ…
大事な人を傷つけてしまいそうになった
こういう事というのなら、潔く振り返って帰るべきであった

「…少しは、冷静になったか?」
「すいません、桐生さん。俺…、ハル、ごめんな。いつもいつも構ってやれなかった俺が悪かったのかもしれない。せめてさよならを聞かせてくれないか?」

俺の真剣な言葉に、桐生さんはため息をついた

「大吾、勘違いしているな?」
「は?」
『ご、ごめんね、大吾さん。私、あの…』

これ、と紙袋を差し出された
完全にパニック状態の俺が受け取ったそれは、マフラーの入った紙袋だった

いつもの感謝の代わりに、何かプレゼントしたいと思ってはいたのだが、決められず
桐生さんに相談した結果、マフラーを編むことにしたのだが
編み方が分からず、以前遥から教えてもらった編み方を教えるべく毎日桐生さんにあっていたと言うことだった

「え…俺、すごい勘違いして…」
「よかったなハル」
『はい!』

桐生さんは笑いながら帰っていった
俺は居た堪れなくなってハルを抱きしめた

「俺、嫉妬してたな…ごめん。マフラー嬉しい。」
『私こそごめんね?勝手に居なくなって…』

顔を上げたハルと見つめ合い、口づけを交わした

『…マフラー、季節外れだと思ったんだけど、大丈夫?』
「全然大丈夫だ」

もう一度抱きしめて、桐生さんに謝らなければならないことを思い出して、またバツが悪くなった






私が住んでいるところは、まだすごく寒いです


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