∵ちむどんどん!


今日もいつも通り晴天のこの沖縄
いつも通り変わらない顔で後輩のいる養護施設、アサガオにやってきた
柴犬のマメに元気よく吠えられて思わず元気だなー!と笑う

「ハル先輩こんにちは!今日も元気ですね!」
『ちゅーかなびらー!!!遥ちゃん今日もかわいいね!』

私がそういうと遥ちゃんは首をかしげる

「ちゅーかなびら…?」
『あ、ゴメン〜!沖縄の方言でこんにちはっていうんだよ〜!』
「…先輩、わざとですよね!」
『あ?バレた?』

もう!と怒ってもかわいい遥ちゃんに笑いながら言う

「っていうか今日の先輩なんかメイクとかしてますか?」

どこか違う気がするんだけど…
とつぶやく彼女にドキッとする。学校にいるときとここに来ている時とは気合いが違うのだ!

「ん?ハルか。こんにちは。」
『こ、こんにちは!』

頑張って頑張ってやっと呼び捨てしてくれるまでにたどり着いたおじさん
この人のために私は今日もかわいさを磨いているのだ
でも結局はその可愛さは見た目だけになってしまいがちで…
それでも玄関から顔を出して靴を履きながらこちらにやってくる桐生さんを見て、自分を隠すことなんてできなかった

「あ、おじさん!ハルさんいつもと違くない?」
「髪型じゃないか?」
『えっ!』
「…違ったか?」
『い、いえ!違うくないです!』

あっさりと答えられてしまって準備していなかった心臓はばくばくしている
いつもはポニーテールだから、今日はサイドにしようかなと思ってきたのだが

『あの…似合いませんかね…?』

どきどきとして心臓が首から出てきてしまうくらいにうるさいものを首に感じる

「そんなことはない。似合ってるぞ」
『あ、ありがとうございます!』

このたまにしてくれる笑顔!たまらないんだなあ…
頭だけ天国にいて、また帰ってくる

「それより、今日は茶しか用意してないんだが…」
『全然大丈夫です!』
「そうか。すまないな。」
『ぜんっぜん!お構いなく!』
「ああ」

クス、と笑われて恥ずかしく思いながら玄関で靴をそろえる
遥ちゃんは自分の部屋からノートを持ってくる
私は標準的な知能で、できる限りのことを教える
横には桐生さんの淹れてくれたお茶が置いてあった

しばらく時間がたつと、小学生の皆が、遊びに飽きたのか、私の元にやってきた

「ねえねえハルお姉ちゃん!今日はおにごっごしよう!」

私は遥ちゃんを見ると「今日の分は一通りできたので大丈夫ですよ!」という

『じゃああそぼっか!』
「やったー!」
「ねえねえ、たまにはおじさんと遥お姉ちゃんも一緒に遊ぼうよ!」

その声に遥ちゃんと桐生さんはえっ、と言った
遥ちゃんは夕飯の支度をするからおじさんが遊んであげて、と言う

「ああ、遊ぶか!」
「やったー!!」
「ハルお姉ちゃんが鬼ね!」
『また〜?いいぞー!10数えるからね!』

き、きききき桐生さんと鬼ごっこ…!
震える声を悟らされないようにあくまでも笑顔で言う
桐生さ〜ん!ははは〜捕まえてみろ〜!
脳内のお花畑はほんの10秒で素早く幕をおろし、私は走り出した

「よっし!いくぞー!!」







「くっそー!ハル姉ちゃん容赦ねー!」
『はっはっは。徒競走には自信あるのよ!』

子供たちは全員捕まった
あとは桐生さんだけ…!

「おじさん大人げないぞ!」
「おじさんも子供心を忘れていないんだ!」

桐生さんがわけのわからないことを離れたところから叫ぶ

『よし!桐生さん、捕まえてやるぞー!!』
「頑張れー!ハルお姉ちゃんー!!!」







『もー…どこいったんだろ…』

桐生さんの後ろ姿を追うたびに見えなくなる背中を死ぬ気で追いかけてきた私はついに見失ってしまったらしい
思えば随分遠くまで来た。アサガオはあまり上手に見えない。

「ハル」
『ひゃああい!?』

後ろから突然現れた桐生さんに訳も分からずがむしゃらに腕をふる
しかしその腕は当たらず届かない範囲まで距離を置かれる

『もー…桐生さんほんとに大人げないですよ!』
「悪い悪い。つい楽しくてな」

そういう桐生さんの顔にあまり謝罪の気持ちはこもっていないようだった

『もう!いい加減捕まってくださいー!!』
「断る」

微笑みながら避ける桐生さんに勢いをつけてとびかかろうとした
その時、私の足元の小石がまるで漫画のように置いてあり、漫画のように小石にひっかかった

『わっ!』
「ハル!!」

その瞬間、私は桐生さんのオレンジのアロハシャツに受け止められていた
大丈夫か?と言いながら私の顔を覗き込んでくる桐生さん



そんなあなたに、心臓のどきどきが止まりません!
(ちむどんどん!)(どきどきする!)



桐生さんの髭の生えた頬に触った

『えへ、桐生さん、やっと捕まえました』







ちむどんどんとは、沖縄の方言でどきどきするだそうなのですが、合ってますかね?
最初のほうのこんにちはも不安です(笑)
方言はググらせていただきました(;´Д`)


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