∵彼女はさいきょう


女っていうのは、所詮顔にだまされるもので、俺の声にもだまされる
自分でいうのもなんだが、俺が顔の造りが人よりも優れている
そんな俺の顔を道端で見て黄色い声が聞こえてくるのは珍しくない
ただ俺は、目の前の女に戸惑っていた

『どうしたんですか?』

彼女は首を傾げながら笑顔で言う
綺麗な髪を揺らしながらその純粋そうな瞳で俺を見つめてくる
俺がいくら見つめようが、こうなってしまうから、逆にこっちがもどかしい
いつもなら相手は赤面したり、視線を外したりするのにな
俺はこいつを相手にするといつもそうだ
今だってハルの手を握って見つめてみているのだが
当の本人は不思議そうな目で俺を見ていた

「いや、あの…すいません」

そんな彼女にいつも押し負かされ、彼女を家へと送る毎日
今日こそは…!そう思って何回目だろうか

「ハルはな、わかってないだけなんだ」

そう言った元堅気の強面な知り合いを思い出した
そうは言われても、伝わらないんじゃどうしようもならない

「なあ、ハルってさ」
『ん?』
「俺のことどう思ってんの?」

そこらへんの女になら効くこの顔で台詞を吐いた

『やだな、好きだよ?』


そういった彼女は今日も俺を困らせる






天然娘にデレデレする谷村が書きたかったはず


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