∵大切な1日


今日は久しぶりに二人の都合が合い、神室町でデートをしていた

『久しぶりだねー!』
「ああ、そうだな」

私が歩きなぎら桐生さんの顔を見つめていうと、桐生さんは優しい顔で微笑んでくれる
バッティングセンターにボウリングなど、今日は色んなことをした
私は結構満足感のある1日だったのだが、桐生さんもそうなのかな?

『き、桐生さん…』
「なんだ?」

思い切って踏みだした言葉も、その優しそうに細められた瞳を見るだけで喉でつっかえてしまう

『桐生さんは楽しいですか?』
「ああ、楽しいな」

優しい声で答えられてほっとしつつも、電球のようにすがすがしく、明るい気分になる

「でも疲れたな」
『はい。汗もかいてしまいました。』
「風呂にでも入りたいな」
『そうですね。そういえばこの近くに銭湯ありましたよね。』
「よし、行くか」

何気なく銭湯に行くふりをしているが、心無し緊張してしまっている
いくら一緒に入らないとはいえ、それでもなんだか緊張してしまう
そんな気持ちを笑いながら誤魔化しつつも銭湯に入っていく私達
あっという間に分かれていた
とにかく入らねば、と気合いを(入れる必要は無いのだけれど)入れて浴槽に浸かった
今までの不安なんて吹き飛んでしまうくらい

桐生さんの大きな体が浴槽に浸かったら、私の時よりもお湯が出ていってしまうんだろうなあと考えてふふ、と笑ってしまった

「ハル?」
『!は、はひ!』

あ…
か、噛んだ…

『え、えと!あの、なんでしょう?』

隣から聞こえてくる桐生さんの声に慌てながら返答する

「いや、いい湯だなと思ってな」
『はい。全身が癒されてる気がします』

桐生さんは、はははと笑った

「普段からの疲れも癒されるな」
『喧嘩とか?』
「まあそんなところだ」

やっぱり私と一緒じゃない時は喧嘩ふっかけられたりしてるのかなあと思った
神室町のヤンキーやヤクザたちは桐生さんの顔を見てもわからないもんだからとても大変だ

『…そろそろ逆上せちゃいそうです……』
「そろそろあがるか」
『はい』

逆上せそうというのは、やはり桐生さんが隣でお湯に浸かっているからというのもあった
熱い身体を冷ますために顔を手でパタパタと煽る

浴衣に着替えて、同じく浴衣姿の桐生さんと卓球場で会う

「折角だし、卓球でもするか」
『はい!やりたいです!』
「ああ、お手柔らかに」
『こちらこそ!』

桐生さんの浴衣がまくりあげられている腕、浴衣から除く桐生さんの逞しい胸板
どれにも気を取られそうになる
口角を少し上げて微笑む桐生さんと卓球玉を打ち合った







『桐生さん強いですよ…』
「はは、そうか?」
『はい!』

私は見事、桐生さんに負けてしまった
打ち合っている中でも、桐生さんは持ち前の男らしさを捨てず、かっこよくラケットを振る
そんな仕草に見とれてしまったのもあるんだからこれはきっと公正な負けではない。きっとそう。

「…そろそろ帰るか」
『うん!』

鼻歌を歌いながら桐生さんと帰る道はいつもより楽しかった


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