∵焼き餅焼くとて手を焼くな


うーん・・・未だに私の立ち位置が不安で、どうしてこうなったのかもわからない
唸る日々が続くが、それでも峯さんに会えた事や、それ以外の人で出会った自分が変わったこととかは、悩むことではなかった
しかし峯さんも私も、お互いが大好きなので、せめて私は峯さんの秘書になりたかったなあと思う
純粋に勉強、仕事をやってきた私だけど、乙女思考で恋愛経験の少ない私にとって、峯さんはとても私では追いつけないような人だった
素敵なディナーに連れて行ってもらって、仏頂面で告白の言葉を呟かれたときは、世界が止まったような気がした

「峯のこと、考えてるのか?」
「あ、いや、そんな・・・すいません・・・」
「いや、気にするな。お前ら二人は俺にとって、微笑ましい二人だからな」

そう優しく笑う堂島さんは、とても素敵な人だと思う
でも、代々伝わるこの東城会本部では、堂島さんも荒れに荒れていたそうな・・・
しかしやっぱり理解ができないのは、六代目という大事な役についている堂島さんの秘書が、女の私だということだった
うん、やはりよくわからない。普通は男の人なんじゃないか?
そう考えるのも、怖い人たちとすれ違う事にも慣れてしまった私はいざとなったら堂島さんを守れるのだろうか
怖い人から電話に出て、それを伝える事も、最初はなれなかったものだが、慣れとは恐ろしいものだった
そんな時、電話がかかってきた

「はい」
「おうハルチャン!元気しとるか!ワシ、ハルチャンの声をこうやって聴くだけで元気出るで〜!」
「真島さん・・・そういう御用でしたら、私の電話のほうにかけてくださいと言ったじゃないですか」
「せやかてハルチャン、そっちに電話かけても出ないやん・・・!」

電話越しにぶすくれる真島さんを宥めていると、堂島さんが、私の様子を見てクス、と笑った

「も、もう!切りますからね!今度はちゃんど出ますから!」
「わかったわかった。ほなな〜」

プチッとボタンを押して、電話を切ると、笑っている堂島さんを叱る

「なんで笑うんです!」
「いや、だって、出なきゃいいのにな」

体を震わせるほど大笑いするのをこらえている堂島さんにそっぽを向く
すると部屋の扉がノックされて、私は駆け寄る
上質な扉を開くと、目の前に広がったのは、前髪から一房落ちているいつもの峯さんだった
峯さんは私の様子を見て、少し目をとめたが、すぐに逸らした

「お、峯か」
「大吾さん、ハルを迎えに来ました」
「え、もうか?・・・そうだな、こんな時間だ。気をつけて帰れよ。」

いつも優秀にしているお蔭で、堅気の私にできる仕事はないので、あとは本職の皆さんにお願いした
しかしやっぱりそんな二度手間を省くためにも、私はいらないんじゃ・・・
そう思っていると、峯さんに手を引かれ、コートと峯さんから頂いた素敵なバッグを持って、峯さんのスポーツカーに乗った
会話もないままに暗い路地に曲がると、車を止めた峯さんを、隣から見る
それでも峯さんは、いつもの気難しい顔をして、しかし眉の力は入っているので、怒っているんだなと思わせた

「み、峯さん・・・?」
「・・・・・・・」
「何か、怒ってますか・・・?」

小さくため息をついた峯さんは、シートベルトを外して、私の横の手を置いた
それはまるで、叩きつけるかのようだった
あ、やっぱり怒ってる・・・街路灯のせいで、影の沢山出来た峯さんの顔は、やはり怒っていた

「あんたは緊張感がないんですよ」
「え?」

峯さんの言っている事がよくわからなくて、聞き返すと、何も答えてくれない
もう一つ、言葉を返そうとしたが、その口は峯さんの唇によって塞がれた
いきなりの荒々しい口付けに、戸惑いながらも、舌を伸ばした
戸惑いながらも、唇を離した峯さんを見つめると、目を逸らした

「俺の前では笑わないだろ」
「・・・・」
「大吾さんは面白い顔なんてしてねえだろ」

峯さんにしては突拍子もない事を言うので、気が抜けてしまった
堂島さんの前で大笑いしてしまったりしたのを、いつしか見ていたのかもしれない
それで峯さんはそんな事を言い出したのかも。と思った

「峯さん、あの・・・笑わないのは、その・・・」
「・・・・・・」
「緊張する、からで・・・・」

峯さんは目を逸らしたまま、ピク、と動くと、すぐに顔を掌全部で隠してしまった
・・・峯さんが呆れるような事を言ってしまった。と思ったが、チラッと見えた、少し持ち上がった頬肉を見て、息をつく

「・・・すいません、遅くなりましたね。今、車を出します」
「あの・・・」

私は峯さんと目が合うと、頬にキスをし、微笑んだ

















***
素敵な峯しゃんかけない・・・;;


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