∵どちらでもないあなたを待つ


昨日の馬場さんは少し怒りっぽかった
そういう時は、少し気の張る日だけど、楽しくないなんてことはない
怒らせなければ普通の馬場さんだし、明日になれば馬場さんに会えると思っていた
少し怒りっぽくて、少し乱暴な馬場さんは、私の事を好きと言ってくれる
だから、離れられないし、いつかどちらか選ぶ日が来るのだろうけど、きっと選べないんだろう
でも最近は、ふと馬場さんという一人の人物に戻る時がある
昨日も、馬場さんは私の事を壊しそうなほど抱きしめている時、力が一気に抜けた
「馬場さん?」と問うと、「おはようハルちゃん」なんて笑う
その声音は、今日の馬場さんだったから、私は驚いた
驚く私に「ってもうこんな時間か、珍しいな」なんて言った
笑顔で私の手を握って、これから行われるだろう情事なんて無視して、一緒に飲んだ
少し怒りっぽい馬場さんが買ってくるビールを勝手に飲む
でもそれを怒りはしない、怒りっぽい馬場さんは、なんだかんだで馬場さんなのだ

「馬場さん」
「なに?」
「最近は急に変わる事がありますね。何か調子でも悪いんですか?」
「うーん・・・俺もわかんないんだけどね、」

「ハルちゃんに、早く会いたかったのかも」なんて悪戯っぽく笑う馬場さんに、私も微笑んだ
でも、いつしか馬場さんともう一人の馬場さんがコントロールできなくなって、壊れてしまったらどうしよう
そう考えることも少なくないから、馬場さんが心配で、でも言ってしまったら本当にそうなってしまいそうで、怖かった
しかし本当の馬場さんは、一向に表れてくれない
二人の馬場さんが、本当の馬場さんを押し込めて、露出してしまっている
馬場さん、帰ってきて
そう言う勇気もなくて、今日も優しい馬場さんに、優しく抱かれるのであった


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