女の子らしくっ!女の子、らし、く…?
「お前もう少し女らしくすればいいじゃねえかよ。」
「何それ、ジャン。」
ジャンとは出身地区が同じことで、早くに仲が良くなった。
マルコは優しい事しか言ってくれないので、意地悪なジャンに意見を貰うのはなんだか気が引けるが、ありがたく貰う事にした。
それをジャンに伝えると、ドヤ顔で上から、しかも上から目線でものを言った。
「お前は女らしさが足りねえんだよ」
「何なの、どういうこと?」
「そうやって喧嘩腰になるだろ?そういうのやめろよ。」
「これはジャンにだけだよ。ジャンむかつくもん。」
「なっ・・・。失礼なやつだな・・・。」
女らしくとはどういうことだろうか・・・。
仕切りなおして、ジャンに詳しく聞いてみた。
「なんつーかな、色気を出すとか?」
「どうやって出すの。」
「えっ、あー、うーん・・・。足組んで・・・。」
「ほうほう。」
ジャンの言う通り、ゆっくり足を組んで、その足を相手(この場合はジャンだけど)にそっと当てて、目をとろりとさせて名前を呼んだ。
こんなのでいいのだろうか。ちょっとオカマっぽい気もするけど・・・。
「・・・。・・・ねえ、ジャン・・・。」
「・・・はい。」
「・・・いや、"はい。"じゃなくてさ。」
「あ、わり。予想以上にいい感じだわ。」
「そうなの?やった!」
コツを掴んできた私は、なんだか楽しくなってきた。
ジャンはそんな私を見て、視線を下げた。ジャンの視線の先をたどる。
「ちょ、ジャン・・・。いくら彼女ができないからって見ないでくれない?」
「たびたびお前は失礼だな!・・・名前もないわけじゃないしなーと思ってな。」
「何それ!私だって結構あるんだから!」
「悪い、ごめんって。・・・っえ。」
「何?」
ジャンは私の斜め後ろを見て、身体を硬直させた。
そこには恐ろしい形相でこちらを見ているエレンくん。その金色の瞳は私とジャンを殺しそうな勢いで細められていた。
「ど、どうしようジャン。逆効果かな?!」
「い、いや、そういうわけじゃないだろうが・・・。」
「ど、どういうこと!」
「いや、あ、俺寝るわ!」
「え、早くない?」
「おやすみ!」
その様子は、まるでエレンくんに恐れおののいて逃げたウサギのようだった。
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