それでも僕は君の隣を譲る事は出来ないらしい。

「あ、ユミル・・・。」

俺に近づいてきたユミルは、険しい様子で紙切れを僕に渡した。
その折られた紙を開くと、小さな字で"今日の夜、いつもの場所で待ってる"と書かれていた。
ユミルの表情からして、彼女は名前の態度に何か気づいてしまったのだろう。
名前はどういうつもりなんだろう。俺は頭に血が上っていたのかもしれない。
あんなに可愛い名前を、あんなに優しい顔で笑う名前を、あんなに気持ちいい唇をした名前を逃がすわけにはいかない。
今日の夜に決着をつけよう。俺は名前がこんなにも好きなのだから。
どんな事をしてでも。











『あ、ベルトルト・・・。』
「名前・・・。」

名前は俺の顔を見てから可哀想なくらい眉尻を下げて笑った。
彼女の細くて壊れそうな手首を握って、ひきよせた。俺のものだ。

『やだ、やめて・・・!ベルトル・・・んっ?!』
「名前・・・。」

俺は名前の唇を奪い、抱きしめた。
彼女から今、自分の名前を聞くと、ハッとしてしまいそうだった。こんなことしてはいけないって。
でもそれじゃあだめなんだ。名前を誰にも渡せないんだ。俺は知ってしまった。名前の柔らかさ、優しさ。
他の女の子とは違って、抱きしめやすい。他の女の子じゃ変えられない。
肩を軽く押されて、やっと唇を離すと、彼女は悲しそうな瞳で俺を睨んだ。

「ねえ、名前。僕の一番でいてよ。」
『・・・え?』
「君の事悲しませたりしないし、ずっと傍にいてあげるよ。」
『どういうこと・・・?』
「わからない子だなあ。でもそんな所も好きだよ。」

また顔を近づけて、キスをしようとすると、名前に拒まれた。

『わたし、ライナーが好きなの。だめよ、そんなのできない!』
「へえ、いいの?」
『・・・え?』

彼女の腰を掴んで、更に引き寄せた。
耳元に唇を持っていき、恐ろしい言葉をささやいた。

「僕と名前はキスしたよって、ライナーに言っていいんだよね?」
『な、何言って・・・』
「この柔らかい体は僕のだから、ライナーはもう近づかないで。名前もそう言ってたから。ごめんね、って。」
『そ、そんな!』
「ライナーに嫌われたくないよね?」

その時の俺はきっと、悪魔の顔をしていただろう。
もうとっくに人の心なんて捨てた。あんなにこの子に心をかき乱されたんだから。無理だよ。
彼女は涙を流しながら唇を開いた。

『ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・。』
「謝罪が聞きたいんじゃないんだよね。どうしたの?名前」
『・・・ベルトルトの一番になるよ。だから、ライナーにはそんな事言わないで・・・!』

嗚呼、吐き気がして喉が焼けそうだ。
こんな時でも名前はライナーの事を想っている。でもいいんだ。
これからはずっと、僕の事しか見えないんだから。ね、名前。
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