なんつーか、その、

今日の訓練は立体起動が主だった
私の彼、ジャン・キルシュタインは、立体起動の成績が上位で、私なんて比べ物にならないくらい先に行っていた
きっとこの調子だと、彼は目指していた憲兵団に入る事ができるだろう
私は、憲兵団になれたらいいな、という軽い気持ちなので、別になれてもなれなくてもどちらでもいいのだ
このまま上位にもならず、下位にもならず、まあまあの結果で駐屯兵団に入るのも気が引ける
きっとジャンに言ったら怒られるんだろうなあと思いながらも調査兵団にはいろうと思っていた
以前、アルミンに相談しているところをエレンに聞かれたときはヒヤヒヤした
大声で「名前が調査兵団に?!」と言うものだから、思わずエレンの硬そうな頭をひっぱたいてしまった記憶がある

「やあ名前、今日はいつになくゆっくりだね」
『それイヤミ?』

アルミンに冗談交じりで言うと、違うよと微笑まれた

「何か考え事?」

アルミンが珍しく教官に見つからないように一緒にいてくれる

『うん・・・調査兵団に入るって言ったら、ジャン、怒るよね』
「だろうね」

微笑みながらアルミンはそう返す

「でも、だからって調査兵団に入る事はやめないだろう?」
『うん。憲兵団に入る実力もなければ、駐屯兵団なんてものに入ることは絶対にない』

だってつまらないもん、そう呟く私の声は聞こえていたようで、アルミンに名前らしいと言われた

「でもジャンは、名前が頑張らない事のほうが、怒るかもね」

そっか、そうだよね
呟きながら、やっぱりアルミンは皆のことよく見てるなあと思った

『だよね、私も頑張らないと!』
「そうそう、その調子」

笑いながらついてきてくれるアルミンが私は好きだ
いい友人を持ってしまった
その瞬間、足にじんわりと激痛が襲った

「危ない!」

アルミンがそう叫んだ時には、もう遅かった
バランスを崩しながらも、なんとか無我夢中でガスを蒸かし、ワイヤーを弾く
それでも、このままでは・・・!
ゆっくり不時着しようとした
地面が近づいてくる
思わず目を瞑った
すると、来るはずの衝撃は来ず、暖かいものが私を覆った

「あぶねーな・・・どうしたんだよ・・名前・・・」

ゆっくり目を開けると、大好きなジャンがいた
ジャンは怒鳴りたい気持ちを抑えて、震える声で私を叱った

『ごめんなさい・・ジャン・・・』

はあ、ジャンのため息が聞こえた
こんな世話の焼ける女なんていらなかっただろうか
だがジャンは大事そうにゆっくりと私を抱きしめた

「バカ・・・もう二度と俺の事、焦らせるんじゃねえ・・・」

その声は切なそうで、罪悪感が心からあふれそうになった

『うん・・ジャン、ごめんね・・・』
「ごめん、じゃなくて、ありがとうって、言えよ・・」
『う、うん・・・・ありがと、ジャン・・・』

私がそう言ってぎゅうっと抱きしめると、ジャンは照れたように「おう」とつぶやいた
しかしこんな幸せな出来事が訓練中にあってはならなかった
コニーの冷やかしと、教官来ちまうぞ、という一言
それに、私の左足のジンジンする猛烈な痛みが、私達の現状を再確認させた
しかも私達は何がどうなったてこうなったかはわからないが、ジャンの上に私が乗っている状態だった
教官に見つかればいろいろとヤバい

「わ、わり!・・・立てるか・・?」
『う、うん・・痛っ!』
「おい!・・・無理すんな」

ジャンに腰を持たれて立ち上がった
教官にジャンが一言言うと、私をおんぶして医務室へ向かった
とはいえ、私と私の立体起動装置と、ジャンの腰には立体起動装置がまだつけられていた

「ねえジャン・・・重くない?」
『あ?全然重くねえよ、お前とは鍛え方が違うんだよ、バーカ』
「ふふ、ありがと」

私がぎゅっ、と抱きしめるとジャンがバカっ!とまた私にバカと言った

「むむ、胸が、あたっちまうだろうが!」
『ご、ごめん・・!』
「バカ離すな!・・・・しっかり掴まってろ・・」

後ろから見たジャンの顔色は窺えなかったが、耳は確かに真っ赤だった

「あ、あと・・」
『ん?なあに?』
「なんつーか、その、」
『なによ』

ジャンはさっきよりも耳を真っ赤にして言った

「お前の腰、細くて、その、俺は好きだ・・・」

言ってることはセクハラなのに、ジャンが熱のこもった言い方で言うので、つま先からつむじまで熱が通った気がした

『バ、バカキルシュタイン!!』

思わず有り余った力でジャンの頭を殴ると、いい音が鳴った
ジャンがいてえ!おっことすぞ!と叫んだ

『あ、あたしも、その・・・ジャンの腰、逞しくて、好きよ・・?』

消え入るような声で言うと、ジャンは聞こえていたようで、足だけでなく全身が硬直した

「う、うるせえ・・・バカ、好きだ・・・」
『うん、私もジャン、好き、大好き!』
「ほんとバカだな!俺のほうがお前の事大好きだ!」
『私だって大好きだもん!』

そんなくだらない喧嘩をして、幸せを噛みしめた




「イチャイチャは医務室でしろおおお!!!」


往復して帰ってきたライナーが叫びながら立体起動で森の中へ消えていった
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