一馬の部屋は思っていた以上に狭かった
最低限のスペースしかないが、元々狭かったものが、一馬のだらしない生活のおかげでさらに狭くなっているのかもしれない
目の前に広がるカップ麺のゴミにため息をついた後、「わりい」と申し訳なさそうな声が後ろから聞こえた
声の主は唖然としている私を小さなキッチンのほうに追いやってから、やっとの事でちゃぶ台の前にため息を吐き、ジャケットを脱いだ

「なんか食うか?」

よかった、私は堂島組の皆さんから出されたお菓子でお腹一杯だった
一馬の冷蔵庫の中には、缶ビールと少しの食糧しか入っていなかった
一体、どこの口からなんか食うか?なんて事が出てくるのだ
これでは食べ物を見つけるほうが大変だ

「いいよ、疲れたし、寝よう」
「風呂は?」
「じゃあシャワー、借りようかな」

一馬に案内され、小さな脱衣所で服を脱ぎ、シャワーのノブを捻った

「ひゃ・・・」
「どうした名前?!」

ドタバタと足音が駆けつけて、扉を一斉に開けた

「大丈夫か?!」
「ちょ、ちょっと!」
「あ!」

一馬は濡れた私の身体から、顔を紅潮させ、目を開けて動かなくなった
私の目の前には、首元に金色のチェーンをつけ、上半身裸のマヌケな二十歳がいた

「な、なに見てんのよ!」

私は座り込んで、なるべく全部を隠すように努力した

「お、おまえこそ何してんだよ!叫ばれるとびっくりするだろ!」
「水が冷たくてびっくりしたのよ!」
「こうすりゃいいんだよ!」
「あ、そっか」

一馬は顔を温度をそのままに、水の温度設定を変えた
なんだ、そっちを捻ればよかったんだ
一馬は水に手をあて、これならいいだろ、と私にその水をかけてきた

「ひゃ!ちょっ・・・もう!」

ふん、と鼻で笑ってから一馬はそそくさと出ていった
何よ!耳まで真っ赤にしてるくせに
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