「ねえさん」 『んー?』 「風呂あがったよ」
んー、と返事をすると 一馬がまだやってんのか、と私の後ろから覗き込んでくる
「あんま無理すんなよ」 『わかってるって』
そう言いながらも私は深夜まで勉強をしていた 窓の外の景色を見て、もうこんな時間か、と時計を見る すっかり静かになったヒマワリの中の廊下を歩く 勉強のあとの浴槽は、私をリラックスさせる 肩から力が抜けるのがわかる お風呂からあがり、髪を乾かさずに寝巻きを着る 暖かい湯気を抜けて冬のはじめの空気に触れた肌は鳥肌になる さむいさむいと言いながら玄関の外に出て、座る ふう、と息を吐く すると後ろから私の腹に腕が周り、背中に暖かい体温を感じた
『・・・誰?』
見えない後ろを見て、視線をまた前にむける 無駄に長い足が私の体の横で曲げられていた
『一馬・・・?どうしたの?』 「・・・名前が倒れないか心配」
甘えるようにすりすりと背中に顔を寄せる一馬は、やはりまだ小学生だった クスリ、と音が聞こえないように笑う 向きを変えて正面から彼の体を抱きしめた
『私はどこにもいかないよ。大丈夫。』
優しく言って、一馬の背中をぽんぽんとあやすように撫でる 一馬は甘えるように私の首元に顔を押し込んだ 一馬の黒髪が揺れる 眠い?ときくとこくん、と頭がゆれた |