「・・・名前は、彼氏とかできたのか?」

沈黙を破ったのは、年下の桐生一馬
傍から見れば、きっと私のほうが年下に見えるだろう
私は一馬のトレーナーを貸してもらって、一緒にビールを飲んでいた

「高校からは、結構できてたかも」
「俺たちがあんまりいかなくなった直後だな」
「そうなの、皆一馬とか彰が怖かったんだって。情けないよね〜」
「・・・近づけないようにしてたからな」
「ん?何?」
「なんでもねーよ」

一馬が視線を外して、缶をくいっと持ち上げたあと、私が話題を振った

「一馬は?可愛い子いっぱいいるんじゃない?」
「いや、全然ダメだ」
「一馬ってモテそうなのにね」
「んなわけあるかよ」
「えー、一馬って結構カッコイイし、喧嘩だって強いじゃん。好かれたりされた事だってあるでしょ?」
「あ」

一馬には心あたりがあったらしく、思い出しているように、目線を上に持ち上げた

「でも付き合ったりはしてねえよ」
「へー、そうなんだ」

じゃあ一馬って、童貞なのかな
いいヤクザが、この歳になって、大丈夫なのかな
そんなかわいそうな事を思っていると、一馬が「そろそろ寝るか」と問いかけた
一馬の部屋には、布団が一つしかなく、私の事を寝かせてくれた
電気が消えてからも、神室町に近いこのアパートに、騒がしい声が聞こえた
まぶしいなあ、やっぱ都会だよ・・・

「・・・一馬」
「・・・なんだ、寝れねえのか」
「うん、一緒に寝よ?」

あの頃みたいに、
一馬は私を包んでいる布団を引っぺがして、私の近くにやってきた
お酒の匂いのする一馬は、素早く寝てから、私を抱きしめた
久しぶりの一馬の匂いが、お酒の匂いの奥にあって、鼻を霞めた
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