「抱きしめたこともないくせに」

「ム・・・。」

 用事で外にでかけていた御剣は、先ほどようやく終わり、自分の作業部屋に帰ってきて一息つこう、という所だった。
 ソファに横になっているのは事務員の名字名前だった。彼女と御剣は交際を始めたばかりの初々しいカップルだ。非番であった名字がなぜ私服でここに横になっているかは御剣にはわからない。わからなかったが、なぜ今日に限って彼女は生脚なのだ。御剣は恥ずかしい事に、そこに目が行って落ち着かなかった。
 いつものように唸りをあげ、紅茶を入れようにもやはり彼女の脚が気になる御剣は、ついに彼女に近づいた。
 穏やかな様子で瞼を閉じ、肩で呼吸しながら寝息をたてる。なんて無防備な姿だろうか。御剣は少し遺憾であった。
 膝上の可愛らしいスカートは、ソファの上にある名字の生脚にかかり、あとは重力に従って落ちていた。こちらに背を向けて横になっている名字の太股はおろか、下着が見えそうだった。
 視界に自らの角張った手が入り、御剣ははっとした。気づけば御剣は彼女の尻を目の前に座り込み、もどかしく隠れているそこに手を伸ばしていた。自分の行動が情けなくなり耳まで顔を赤くする御剣。一体自分は何をやっているのだろう。
 しかし考えても見れば、これはチャンスなのではないか?名字はなんとも心地良さそうに眠っている。スカートを捲っても、否、尻を触っても大丈夫なのではないだろうか?御剣は悪魔と戦っていたが、自分と名字名前は交際している、という事実についウッカリ負けてしまった。
 白い太股に手を伸ばし、指先で触る。どうやら本当に生脚のようだ。恐る恐る掌をその太股にくっつける。思わずその柔らかい見事な感触に御剣は頭が真っ白になった。自分のものとは違い、すべすべとして柔らかい。ずっと触っている、のはアレだが、とても気持ちがいい。御剣は一通り感触を確かめるようにその太股を撫で回した後、スカートの中にある尻に恐る恐る近づいた。指先にスカートとは違う感触。御剣はゴクリ、と喉を鳴らした。細かい布の感触、これは、きっと・・・レースだ!
 薄い生地に包まれたその奥の柔らかな尻に触る。「んっ・・・」御剣は目を見開いてだらしなく開いたままだった口を閉じ、一瞬で手を引いた。そして言い訳を考えた。名字の顔を見るが、彼女は未だに目を覚まさない。ホッとしたと同時に少しの罪悪感が御剣を襲い、小さく、深く溜息をついた。御剣は自分の羽織っていた赤いド派手なスーツを脱ぎ、彼女の足元にかけた。これでもう危ない輩に手を出されることは無いだろう。・・・自分も含めて。
 御剣はもう一度彼女の穏やかな寝顔を見て、口元を緩ませた。彼女を起こさないよう、御剣は資料を取り、少し外に出た。




***
どうも!むっつりスケベの御剣と!がっつりスケベのナルホドです!
誤字を修正しました。(2016/03/03)
 
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