「イエローの瞳で見つめる恋人は」

夜神月、彼はとても頭がいい。
私が出した問題も、私が出す問題もすぐに解いちゃうし、私の行動も周りの行動もお見通し。
一体いつからこんな子になったのだろう。彼が頭脳明晰なのはわかりきっていた事だけど。
そんな彼とは、最近周りには内緒の関係になった。内緒と言っても、不健全なものではなく、彼の通っている大学の教師が彼の彼女というのはあまり表に出せるような事ではないからだ。
まだまだ付き合いたてで、三ヶ月を過ぎただろうか。月は私の職務が終わるまで待っていてくれて、手を繋いでくれたり、なかなか可愛い所がある。

「今日は遅かったね」
「ごめん、月。長引いちゃって・・・」
「いいよ。いこ。」

ぐいっと私の手首を引いてそれから手を繋ぐ。引き寄せられた時の力強さに月も男なんだと考え、なんだか性懲りもなくドキドキする。
家に帰っててもよかったのに、と言おうとしたが、月は家に帰る事をしなくても十分秀才だった。

「・・・最近は物騒なんだから、気を付けろよ。」
「ん?あ、キラの事?」
「そうだよ。いつそんな奴が現れるかわからないんだから。」
「わかったよ、もう。」

心配性だなあ、なんて思いつつも、心配してくれた月を可愛らしく思うあたりで私は相当重症なのだろう。
キラとは、最近出てきた一応犯罪者で、死んで当然だと思われるような人を殺していくという恐ろしい存在だ。
そんなキラがどんな人かは分からないけど、死んで当然の人なんていない。そう私は考えている。

「まあ、私にはすっごく頭のいい月くんがついてるもんね。」
「やめろよ、恥ずかしいな。」

そういいそっぽを向く月の頬は、赤く染まっていた。
私はそんな月を愛おしく感じ、彼の腕に腕をからませた。









ある日、ある一人の生徒の葬式が始まっていた。
彼はごく普通の一般生徒で、授業もきちんと受けていたし、元気で直な青年だった。
彼と言えば、私と月が手を繋いでいる所を見た人物だということを思い出した。彼がそれを目撃したのは、一昨日の夕方の事だったのだ。
運がいいのか悪いのか、私たちは平凡な毎日を送り、彼と彼の家族は、悲しみに明け暮れた。

「聞いた?交通事故で死んじゃったらしいよ。」
「昨日の朝なんでしょ?普段から車も人も通らない所で・・・」

ヒソヒソとくだらない会話が聞こえてくる。人という生き物はとことん噂話が好きらしい。
こんな状況で彼の事故の原因を話しているのが嫌でも耳に入る。場所を変えようと、私は席を立った。

「えー、なんかキラが殺したみたいじゃん。」

葬式を終え、家に帰る。マンションの前で月が立っていた。
月と目が合った瞬間、彼は安心しきったような顔をして駆け寄ってきた。
彼も同じ人の葬式に行っていたので、黒い服を着ていた。

「っわあ、」
「よかった・・・やっと会えた・・・」
「月?」

月は私に飛びつき、痛いくらい抱きしめた。
泊めて、と耳元で囁いた月の背中を宥めるように擦った。
月は少し嫌な事があったようで、詳しくは話してくれなかったが、なんだか辛そうだった。
しかしそれに反して、どことなく安心したような顔をしていたような気がする。陽が落ちて、白い月光が二人を照らした。

「ねえ、名前」
「ん?」
「僕に何があっても、ずっと一緒にいてね。」

月は私を抱きしめながら言った。「ずっと一緒にいるよ」と言うと、月は安心して瞳を閉じた。
それに誘われるように、私も瞳を閉じた。その日は夢を見た。眠っている私に、月が髪を撫でて囁く夢を。


「僕はキラだ。頼むから、嫌いにならないでくれ。」
 
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