ハセヲside


『うるさいっ』
「なあなあー本当カンベンしてくれよ〜」
『じゃあ僕の言うこと必ず聞いてね』
「いいよっ!なんでもするから!!」
『…今の録音したから』
「!?」
俺がカオスゲートの前に来たら知っている声が聞こえた
「お前ら何やってんだよ…」
俺が声をかけると名前は涙目になりながら俺の後ろに隠れた
『クーンがきもいんだよ!』
「きもいってなんだよきもいって!!」
『だって気持ち悪いもん!無視してるのにいい』
「確かにクーンはキモい」
「ハセヲまで!?」
そりゃこんなナンパ男の事を名前がキモいっていうのはよく分かる
ってそういえばクーンとエリアに行くんだった
「で、どこ行くんだ?」
「Δ大いなる 呪いの 義兄弟だ」
『ハセヲ〜クーンから僕を守って〜』
「お前なら大丈夫だろうが」
『だってクーンキモすぎる!!!』
すごい押してるなこいつ…
そして視線をずらすとオバサンまでいる
「なんでオバサンまで?」
「その…危険なことがないとも限らないからね」
『パイ〜〜守ってよ〜〜』
「私はハセヲの横に並ぶのはイヤよ」
オバサンが言う
「俺だって嫌だね。名前はオバサンと俺の間にいろ」
『わかった!』
「私には名前だけだわ…」
『僕もパイ大好きだよお〜』
オバサンと名前はいちゃちゃとまるでカップルのように接している
「………」
『どうしたの?ハセヲ。顔怖いよ?』
俺そんな怖い顔してたか?
「ふふふ名前…ハセヲは嫉妬してるのよ」
「んなわけねーだろ!!!」
つい体温が上がるような感覚がする
『もーいくらお母さんが取られたからって嫉妬はだめだよ?』
「………」
「………」
「………あのさ名前」
『なあに?クーン』
「お母さんってつまりその…名前?」
『え?展開的にそうでしょ?』
俺は溜息をついた




ボスを倒してもアバターは出てこなかった
もう少しで出てきそうなのに…っ
『ねえハセヲ…もうやめにしよ?一旦タウンに戻ろ?ね?』
名前は俺の肩に手を乗せて言う
俺は仕方なくタウンに戻った

「気にするな。こっちだって、簡単に開眼できるとは思ってないさ」
クーンはタウンに戻った直後そういった
やがてクーンは帰り、俺とオバサンと名前が残った
「大きすぎる力には、リスクが伴うのよ」
オバサンがこの一言を言うと、名前はピクンと反応した
「……?」
「アバターの力を完璧にコントロールすることは、私にもクーンにも出来ない」
オバサンは名前の方を見ていった
「もちろん名前もね」
名前はアバターを作ったと言っていた
それでも力をコントロールすることは難しいのか?
「使い手の意思を離れた力は、破壊を引き起こす…」
『……っ』
名前はなんだか苦しそうな顔をする
「この力は、可能な限り使うべきではない…
 でも!でも、あなたは"使う"わ」
『パイ…』
「アバターを手に入れたあなたは、喜んでその力を使う」
オバサンが一言言うたびに名前の顔が苦しそうになっていくのは俺の気のせいか?
「たとえ、それが自分の大切な人たちを、傷つける力だったとしても」
『………っ!!』
名前は急にしゃがみこんで頭を抑えている
とても、苦しそうだ
「おい名前?大丈夫か?」
『だ、大丈夫…』
オバサンは何かに気付いたような顔をした
「ごめんなさい名前…」
『大丈夫だよ…ちょっと僕外の空気吸ってくるから話が終わったら呼んでね』
名前は立ち上がると走って外に出て行った
オバサンはそれを悲しそうに見つめていた
「………?」
「…それじゃあ話を続けるわ」
オバサンは俺に疑問を残したまま説明を始めた
「たとえ、それが自分の大切な人たちを、傷つける力だったとしても
 あなたは喜んで使うわ…」
「……ずいぶんよく判るんだな」
俺はオバサンに言ってやった
「判るわよ…あなた…私と、似ているから」
俺がオバサンと…?

オバサンが外に出ると名前の存在を思い出す
俺も名前のいる外へと走り出した

「名前…」
名前はすぐそこにいた
壁に寄り掛かりながら体育座りをして、顔を回りに見せないようにしていた
『ハセヲ…』
急に聞いたことのない声で自分の名前を呼ばれた
『ごめんね…あたし、バカだから…ごめんね…』
名前は涙声で何かに謝っている
不思議と自分の名前を呼ばれたのに自分に言っているような気はしなかった
それに今までの名前とは雰囲気が違った
『ごめん…ごめんね…ごめんなさい…』
ひたすら泣きながら謝っている
俺はこんな目の前の光景に手を出すことができずにいた
『ごめんなさい…ごめんなさい…』
「……名前」
俺は気付いたら声を出していた
俺は名前の隣に座ると頭を撫でた
「名前…謝らなくていいんだ」
『いや!!』
名前は俺の手を振り払った
『…だめなの…誰もあたしに触れちゃいけない…近づいちゃいけない…』
「何言ってるんだよ名前」
俺の声も聞こえないのか、俺の言葉をさえぎって話す名前
『あたし、消えなくちゃいけないの…だから、何回も消えようとしたのに…!!』
ふと、俺は最近のニュースを思い出した
最近一人の少女が自殺をしては助かって、その繰り返し
そんなニュースが耳元を通っていた
『それでもあたしの腕は動いてる…こうやって生きてる…
 もういやだよ…怯えたくないのに…だから強くなったのに…』
名前は一体何を恐れているんだ…?
『嫌…もういやだ…あたし…どうすればいいんだろう…』
名前はやっと顔を上げた
俺はその顔に一瞬ゾクッとした
今までに見たことないリアルな暗く濁った瞳をしている名前
涙さえ出ないのだろうか
もう何もかも失っているような顔をしていた
「名前……」
今までの名前じゃない
今までの名前は明るくて、単純で、不思議なやつだ
今の名前はもうイキモノでもなんでもない
まるで何も入っていない人形のようだ
「名前!!」
俺は思いっきり名前を抱きしめた
『………は、セヲ?』
「もういい…何も言わなくていい…」
名前の顔を見るだけで心臓が押し付けられるようだ
罪悪感だろうか?なんなのだろう
「正直言って、俺はお前がわからない。でも、もうそんな顔するな」
『なんで?なんでそんなこというの?あたしはもうなにものでもないんだよ?』
「それでも名前は名前だ」
『……だめだよ…はせをはだまされてるんだ…』
名前はぐったりと体を俺に預ける
『この"名前"っていうなまえのぴーしーにだまされてるんだ…』
「おい名前…やめろよ…もう喋るな…」
『……うん…』
俺は黙ったままの名前を強く抱きしめた
なぜだかすぐ側に名前の体温があるように感じた
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