わたしのヒーロー | ナノ



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後継者について考えている間に、私の周りでは"派手で強い個性かっこいいな"という話題で盛り上がっていたようだった。



「派手で強えっつったら、やっぱ轟と爆豪だよな!」

「……確かにね」



近くの席に座っていた爆豪くんは、自分の名前が話題に上がったことに顔を上げて、こちらに目線を向けたが、「ケッ」とそっぽ向いてしまった。



「爆豪ちゃんはキレてばっかだから人気出なさそ」

「え…「んだとコラ出すわ!!」

「ホラ」



爆豪くんは席の目の前にあるパイプに掴まり、食い付くようにキレた。

それを梅雨ちゃんが指さして、"案の定"と言いたげな顔でこちらを見てきた。

さらに、上鳴くんが追い討ちをかけるように、



「この付き合いの浅さで既に"クソを下水で煮込んだような性格"と認識されるってすげぇよ」

「てめぇのボキャブラリーは何だコラ殺すぞ!!」




「………」


果たしてそうだろうか。

爆豪くんは確かに言葉選びにこそ問題があるが、
機敏や反射神経には目を見張るものがあるし、
完璧主義でストイックな性質も、

子供からは理解されないだろうけど、一部の女性や男性ファンが多そうな………



「普通に、人気出そうだけどなぁ…………」



誰がとか、何がとかは全くもって言ってないその発言。
声に出していたことに気づいた瞬間に、"まずい"と感じた。

だって、横と斜め前からの圧がすごいもの。


すぐ近くから感じるそれと、少し離れたところからも感じるそれに耐えきれず、そっちを見れば、

青山くんを挟んだ、三奈ちゃんと上鳴くんが、こっちをニマニマと嫌な笑みを浮かべている。

前からの圧は先ほどまでがくがくと震えていた緑谷くんが、瞳孔を開ききっているくらい目を見開いてこちらをみていた。



これは、まずい展開だ。

彼らのこの反応は確実に、片想いしている女子を見つけたアレそのもの。

完全にからかいの標的としてターゲットを定め、余計な応援をするお調子者の視線。

ちがう。
私は決して爆豪くんが好きな訳じゃない。

飯田くんは性格的に、発言の真意に気付いていないが、"本気か!?"というような目でガン飛ばされている。


こちらから目を離さない上鳴くんに"無視すんなクソモブがぁ!!"と掴みかかろうとしている爆豪くんをなだめている切島くんは、

爆豪くんの声でこちらに気づいていなかった。

爆豪くんも上鳴くんに必死である。



「へぇ?そっかぁ〜、そうなのかぁ〜」

「まじかぁ……何がどうなってそうなったかは知らねぇけど、赤武器はそうなのかぁ〜」

「え?!ええ!?そ、そそそそそそっそういう!やっぱりそうゆうう!?」


「ぇ、あ……ぁぅ………」



言葉が出ない。

喉元まで"違う"という言葉が出かかっているのに……

これはダメ。
このままじゃ否定しても照れているだけのようにしかならない。
手遅れだ。

ならいま考えるべきはこの状況が潜入にどう影響するか。



……………別に悪くなくない?

イイコで、成績も普通で、オールマイトのファン。

そんでクラスの男の子に片思い。

どこにでもいる高校生にしかならないわ。


ならこのまま勘違いされ続けても構わないはず。



「もう着くぞ。いい加減にしとけよ……」

「ハイ!!」


相澤先生が注意すれば、爆豪くんの怒号は止み、
二人はニヤニヤとお互いにアイコンタクトし、
一人は未だに信じられないという顔でこちらをチラチラ見てきた。

三奈ちゃんは私の肩に手をおいて、耳元で小さく呟いた。


「顔、真っ赤だよ??後で詳しいこと聞かせてねー!」

「えええ?!」


バスが止まったのを振動で察した三奈ちゃんは席を立ち上がり、明らかにルンルンとした様子でバスを降りていった。

顔が、赤い!?

私は両頬を覆うように両手で隠した。

確かに、仄かに熱を感じる……


ただの勘違いなのにどうして……

もしや私はこの手の話題が苦手なのか?



「爆豪ー!!お前やるなぁ!!羨ましいぜ全く!!」

「ちょっ!かみなりくっ!!ちょっと!!!」


上鳴くんが大笑いしながら爆豪くんの肩を叩いていた。

ちょっと!!!
もうっ!!
やめい!!!
勘違いだから!!それ勘違いだから!!


今の会話で察しのいいと思わしき耳朗 響香ちゃん、葉隠 透ちゃん、峰田 実くん、障子 目蔵くんにまでばれてしまった。

一目で分かる。

だって、四人は目を見開いて私と爆豪くんを交互に見てるもの。
(透明人間の透ちゃんは指を交互にさしてる)


"わりーわりー"と上鳴くんは謝って(?)バスを下車して、峰田くんは泣きそうな顔で爆豪くんを見ていた。

恨めしそうに見つめる峰田くんに気づいた爆豪くんは"なにガン付けてんだブドウ頭"と本物の不良のように絡んでいる。

透ちゃんは顔が見えないけど、口元(?)に両手を添えてるあたり、絶対笑ってる。超笑顔のはず。
おそらくテンションの合う三奈ちゃんと問い詰めてくるんだろう。
返答を考えなくては。

恥ずかしい思いをしながら気づいてない安全な百ちゃんとお茶子ちゃんの後ろについて下車をした。



………顔が熱い…


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