わたしのヒーロー | ナノ



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「学級委員長を決めてもらう」


「「「「「学校っぽいの来たーーー」」」」」




学級委員長を決めるらしい。

通常の学校であれば、学級委員長は面倒くさいもので、手を上げる人はせいぜいクラスで0から2人程度。

だがここはヒーローを養成するための最高峰、雄英高校ヒーロー科。

集団を導くというトップヒーローとしての機知を養える絶好の役として、それはクラス全員のぶん取り合いとなる。

私も、学級委員長はスパイなどを疑われづらくなるだろうし、教師をしているオールマイトに近づきやすくなる。

なれたら良いな、という程度で手を上げる。


少し周りを見渡せば、一際気迫のある挙手をしているのが2人。

爆豪くんと飯田 天哉くんだ。

爆豪くん……すごい顔……



飯田くんの提案により、匿名制の投票で決めることとなった。

彼曰く、
皆やりたいしお互いをまだ知らない、票が入るとは思えないこの状況で票を集めた者こそ、
学級委員長にふさわしいのではないかと。


匿名制……なら誰に入れても分からないのか……


目立たないことを目標にしてる私に票が集まるとは思えないし、誰かに入れようかな。


………………うん。






***




「僕3票ーーーーーーー!!!?」




"緑谷 出久 3票
爆豪 勝己 2票
八百万 百 2票

轟 焦凍
赤武器 血華
飯田 天哉
麗日 お茶子 各0票

その他 各1票"


ざっとまとめると、結果はこうだった。

一番票が多い人が学級委員長、二番目に票が多い人が副委員長と決めていたので、爆豪くんと八百万さんでもう一度投票をやるようだ。



「なんで…デクが…!!俺より…!!」

「やー、誰だよ爆豪に入れたヤツ。間違えたか?」

「あ!?」



頑なに爆豪くんに入れるのもいいけど……

学級委員長が緑谷くんであることを加味すると、
緑谷くんが爆豪くんに怯えてHRの進行もままならず、それにさらにイライラする爆豪くんの姿が想像できる。


……………うん。




"八百万 百 正正正正 計20票
爆豪 勝己 ー 計1票"



「誰だぁ!?手のひら返しやがったやつ!!」

「顔と名前一致してなかったんだろうな……」



効率を考えた上では、私は間違ってない。


委員長は緑谷くん、
副委員長は八百万さんで決定した。




***




そしてその日の昼休みに事件は起きた。

三奈ちゃんと食堂へ行き、談笑しながらご飯を食べていたとき、けたたましい警鐘に学校にいる全員が驚愕した。

この警鐘はどうやら、学校に許可なく侵入した人物がいる事を知らせるもののようで、
意味を知る上級生を筆頭にパニックに陥り、

食堂は外に避難しようとする人達で溢れ返っていた。


三奈ちゃんも警鐘に驚いて、飲んでいた水を吹き出した後、人の並みに押されてしまいはぐれてしまった。




「わ、ぁ…いてっ」




足踏まれた…誰よ……

ともかく壁際に行って少しでも落ち着いた状態にならないと…

しかし前に前にと進む人の波を横切るのは難しく、
仮にもヒーローの卵である彼らは馬鹿の一つ覚えのようにパニック状態。周りなんて見ていない。

何がこの警鐘を鳴らしているのか、学校側はどういう対応をするのかを知らなくては動けない。

本当にヴィランが来たとしても、
今現在ヴィラン連合以上に凶悪なヴィランはいない。
ヴィラン連合が動くにしても、行動が早すぎる。
私になんの報告もないのも気になる。

つまりはパニックになる理由はない。




「…っ……ちょ、わっ!!」

「ちょ待て、人倒れた!!倒れたって!押すな!!」



あまりにも早い人の流れに、ついにバランスを崩して倒れてしまった。

気づいて声をかける人もいるが、皆他人に構っている暇はないようで、声を上げた人物も流されていなくなった。

私は手足や頭を踏まれないよう身体を丸める。

窓のほうを見ると、胴体と胴体の間では見えなかった外の様子が、足と足の隙間から見えた。
やはりヴィランではない。今朝のマスコミだ。

どうしてただのマスコミが雄英のセキュリティを突破できたの?
誰かが手引きしたとしか………



「………………あんにゃろ」




いた。手引きした犯人。

愉快そうにマスコミを遠くから見ている、白髪のガリガリ男。
くそ、殴ってやりたい。
全身の血抜いてやろうか。




「…!赤武器!!」

「!」



後ろから声がしたと思ったら、先程からぶつかる足から庇うように身体を起こされた。

後ろを見れば、クラス一頑丈な切島くんだった。

私を支えながら人を掻き分けて壁際まで移動すると、やはり人がぶつからないように波を遮りながら立たせてくれた。



「…あ、ありがとう」

「おう!怪我ねェか?」

「うん、切島くんも大丈夫?」

「大丈夫だ!」




ニカッと笑うその顔に少し安堵した。
どうやらこの騒動で私も多少は気が立っていたようだ。

ちゃんと、こういうヒーローらしい子もいるのね。

と、その切島くんが"なんだアレ"と指差した方向を見ると、食堂の外につながる扉の上の「EXIT」という看板の上に飯田くんがへばりついていた。

あれ、なんかあのポーズ見覚えが………




「皆さん…大丈ーー夫!!

ただのマスコミです!なにもパニックになることはありません大丈ーー夫!!

ここは雄英!!最高峰の人間に相応しい行動を取りましょう!!」




その大きな声と印象に残る姿で、人の流れがゆっくりと止まった。

マスコミが原因であることに気づき、

この驚愕と不安で満ちた空間を一気に冷静にさせる。


"集団を導くというトップヒーローの機知"


彼は既にそれを身に付けているようだ。

どうやら、私はヒーロー科を少し見くびっていたみたい。






その日のHR、委員長の緑谷くんの提案で飯田くんが正式な委員長となった。



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