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「お、おる、オールマイトっ、あの」
「告白でもすんの?」
「ちちち、ちが!いや違わないけど!!」
午後、オールマイトの担当するヒーロー基礎学の授業で対人訓練が始まった。
ヒーロー役と敵役に別れて屋内施設で戦闘をする授業。
1組目で危ういチームがあったが、その後は順調そのものであり、私のチームも無事終了。
ヒーローになる予定のない私にはこんなもの無意味で、ただただ無難にこなすだけだった。
オールマイトが派手に教室に入ってきたときから、既に私は演技に入っていた。
オールマイトの大ファンを装い、少しでもオールマイトからの好感度を上げるため。
常にオールマイトに話しかけるタイミングを伺い、挙動不審な行動をする。
そうしてようやく、チーム同士の入れ換えの少しの間に話しかけることになった。
三奈ちゃんを横において。
「す、すみませっ、さいん…」
「ああ!サインだね!今は授業中だから、授業が終わった後にあげよう!」
「へぁ!!あ、ありがとうございます!!」
ここで忘れていけないのは、とびきりの笑顔。
年上の男性と言うのは、無邪気な笑顔に弱い傾向がある。 怯えたような顔と明るい笑顔とのギャップに、好印象以外のものを持つ人間はそうはいない。
ほら。
つられてコイツも笑顔になって、まんまと私の頭を撫でた。
重苦しい、無駄にデカイ手を、傲慢にも私の頭の上に載せた。
ああ、不愉快。
「はーーっ緊張したぁ……」
「血華ってオールマイト好きだったんだ!」
「うん、小さい頃から好きなんだ」
「お嫁さんになるー!とか言ってた?」
言うわけないでしょ気色悪い。
そう思いながらも、三奈ちゃんの大きな声は確実にオールマイトに届いている。これを利用しない手はない。
少し声を張って"なんでわかったの!?"と問い、やや恥ずかしげに振り返ってオールマイトの様子を伺った。
ヤツは照れながら聞こえないフリをしていた。
不愉快だ。
***
今日は初めてオールマイトと話した。
嫌いなヤツを好きだと装うのは想像以上に大変だな。
こんな気分で弔に会ったらキレ散らかす。確実に。 今日は何処にも寄らず、貰ったサイン色紙を何か箱か何かにしまって視界に入らないようにしてから、早めに就寝しよう。
帰宅の準備を勧めると、"硬化"の個性を持つ切島 鋭児郎くんが声をかけてきた。
どうやら、今回の対人訓練に関しての反省会を皆でしないかと誘っているようで、 私は疲れている事を伝えて丁重に断った。
そして、私は彼を見つけた。
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