わたしのヒーロー | ナノ



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身だしなみをしっかり整え、

はやる胸を抑える。



馴染めるかどうか不安はあるが、中学までの通り明るく接すれば、きっと相手も返してくれる。


よし。


気合いを居れて、1-Aと書かれる教室のドアを開く。



「お、おはようっ」

「あ!おはよー!今日からよろしくね!」



肌がピンク色の明るい女の子が、一番に返事を返してくれた。

頭には角が生えていて、髪の毛はふわふわのくせ毛だったので、羊みたいで可愛いと言うと、

彼女は照れて大きく両手を振って喜んだ。


芦戸 三奈ちゃん。


高校で初めての"友達"だ。



積極的な彼女と一緒に、男女問わず回りに話しかけて居ると、どんどん輪が広がり、

どうにか高校一歩目は成功に終わったようだ。




その日は入学式の予定であったが、

合理性を重視する、清潔感とは無縁そうな担任の先生の相澤 消太先生が大幅な変更をし、

個性使用有りの体力測定が行われた。


中学までは体力測定は個性の使用厳禁。

新鮮な行事に心踊るも、最下位は除籍処分と付け加えられたルールに身も心も引き締まった。



私の個性は「血戦」

体外に出た血液を自由に操ることが出来る。
自分の血でなくとも、他人の血に自分の血を少しでも混ぜることができれば、操れる。

ただ、一度体外に出ると空気中の菌が付着してしまうため、体にしまい込むことが出来なくなってしまう。

そのため操れる量が決まってしまうので、

あらかじめ採血して血液ストックを用意している。


50m走では、自分の背中を覆える程度の量の血液を背後に浮上させ、
それに体重を乗せた状態でゴールへと高速で直進させた。

"3秒65"と先生が告げるタイムを聞いて、血液を元の容器にしまってガッツポーズをとる。

他にも、立ち幅跳び、ボール投げで上手く血を利用して良い記録を残した。


これで最下位はない。


むしろ、先程から真っ青な顔をして目立った活躍をしていない緑がかった髪の男の子が、
最下位ではないかとこの場の誰もが思った。

ボール投げの準備に取りかかっている間に、

あまりにも顔の青い彼に声をかけた。


「あの、大丈夫?具合悪い?」

「………ぇ、…あ、いや……!」


突然話しかけられた驚きやら照れやらで、青かった顔が一気に赤くなったので、
顔色は体調が原因ではないことがわかった。


それでも明らかに大丈夫そうではない彼は、"大丈夫"だといってボール投げに望んだ。


結果、相澤先生からの何かしらの注意を受けた後、彼が投げたボールが早く、遠くに飛んでいった。



「……増強型個性…」



投げた衝撃によって生まれた風を正面から感じて、

何もかも吹き飛ばすような強い風に強く思った。





不快感を。




***




カツン、カツンと冷たいコンクリートの階段と固いローファーのヒールがぶつかる音を鳴らし、

少しボロい扉を開けると、現在の服装・雄英高校の制服には似つかわしくないレトロなバーが現れた。

カウンター内に男が一人。カウンター席にも男が一人。


「お帰りなさい、赤武器 血華」

「……ハッ…どーでした?ヒーロー様の卵達は?」




「…………アンタとは別の意味で不快だわ。弔。」




死柄木 弔、黒霧。

ヴィラン連合の仲間。

私があの空間に不快感を感じていることを分かっていてわざと聞いてきた、
この相澤 消太に負けずとも劣らぬ清潔感のない男はどうしたって苦手。

黒霧はまだいい。話が通じる。

同じくオールマイトを憎む者として"あの方"に紹介されたが、

この軽薄な態度がどうしても鼻につく。

"あの方"に言われたから、後ろから刺すような真似はしないけど。



「安全のため、報告以外ではこちらに立ち入らないとおっしゃっていましたが……もう何か?」

「……今日はオールマイトには会えなかった。
けど明日、オールマイトの授業がある。」

「……ほう、では予定どおりに、ですね」

「ええ。」




今日から始まった高校生活が、

私の人生の本番だ。


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