雄叫びと共に現れた大きなライオンと変な頭の男モージ。

あいたかった……会いたかったよリッチー!!!



でもどうしよう……戦闘を開始してしまった……

私、ナミちゃん、町長さんは物陰からひっそりと顔を出して様子を伺っている。

可愛い大きなライオン、リッチーは"自称猛獣使い"モージの指示でルフィを襲い、鉄の檻を破壊した。

そのまま近くの家に吹っ飛ばすも、そんなもんでルフィがやられるはずもなく、ピンピンして出てきた。





「………あれ、アキは?」

「え、さっきの女の子?あら?どこ行ったのかしら……」





シュシュの鳴き声が聞こえる。

大切なものを守るため、血だらけでも威嚇する強い声だ。

小さな犬が大きなライオンに敵うはずない。

そんなことシュシュだって本能で分かってる。



それでも立つんだ。シュシュだって男の子だもん。




「…何だ小娘。死にたいのかぁ?」

「ばーか!死にたくないわい!」



馬鹿なもんで、私はシュシュとリッチーの間に立った。

リッチーめっちゃでかい。

めっちゃ睨んでくる。

でも、



「かわいいワンちゃん泣かす奴、ぶん殴るしかないよなぁ?」



私、動物虐待のニュースとか大嫌いなんだよね。





***





ワンワン!!

ワン!!

ワン!!
ワン!!



結果、まぁ敵わなかった。

リッチーにじゃない。

かわいいライオンを殴るなんてできなかった。

そしてリッチーと私は心を通わせた。

下顎撫でるとふつうの猫みたいに喉ならすのめちゃくちゃ可愛かった………


しかしまぁモージに敵わずボコボコにされてしまったのだ。

腰いたいし脚いたいし腕いたい。



だけど今私は必死に大きな炎に水をかけてる。


そんなに近くに川が流れてなくて、桶で汲んで戻ってきたら、小さな火が大きく燃え上がっていた。

シュシュはずっと吠え続けてる。




「ごめんシュシュ…」




やっぱり戦闘力は欲しいなぁ。せめてルフィが来るまでの時間稼ぎぐらいは出来るようになりたかった。

いや、そんなこと今悔やんでも仕方ない。


今出来ることをやる。




「!…ワンワン!!」




桶の水をかぶって私は炎の中に入っていった。

めちゃめちゃ熱いけど、そんなこと関係ない。

何か、何かひとつでもいいから、シュシュとシュシュの飼い主さんの想い出の品を!!




「!!!」




私は奇跡的に端しか燃えてないそれ・・を手にして炎の中から飛び出した。




「!!ワン!!」

「__っは!はぁ……はっぅ……」




一酸化炭素中毒寸前で、熱さで肺が焼けそうになった。

もうめっちゃ苦しい!!

「例え火の中水の中」って言葉あるけど無理!!
もう入りたくない!!!



「ちょっとアンタ!大丈夫!?」



ナミちゃんと町長が、シュシュの店が燃え尽きる頃に戻ってきた。

未だ蹲って呼吸を整える私に駆けよって、ナミちゃんは煤だの何だのいろんなのを払って心配してくれた。

優しい。美人で優しいとか魅力の暴力だよ。泣いちゃう。



「こんなになって…!何でアンタ海賊なんかにいんのよ!あんな……人の大切なものを平気で奪って!!!」



うなだれるシュシュの様子に怒りが爆発したナミちゃんは、戻ってきたルフィに当たっていた。

ルフィも天然に煽るからさらに怒って、町長さんが止めにはいる。




「アキ、大丈夫か?」

「……っ…は…ぅん……こ、れ……しゅしゅに……」



私は炎の中から持ってきたそれ・・をルフィに手渡した。

ちょ、無理。

マジ動けん。

誰か酸素ボンベくれ。マジで。


ルフィは自分が取り返したドッグフードをシュシュの目の前に置き、

私が持ってきたシュシュの飼い主さんの帽子・・・・・・・・をシュシュに被せた。


シュシュはお礼を言っているのか、私とルフィの顔を見ながら大きく鳴いた。



はぁ、かわいい顔見れた。






あ、やべ、そろそろバギー玉くる。

ルフィのそばに寄っとこ。




「どなってごめん!」

「ん?
いいさ、お前は大切な人を海賊に殺されたんだ。なんか色々あったんだろ?別に聞きたくねェけどな。」


ようやくルフィとナミちゃんが和解した。

ナミちゃんもルフィへの誤解が晴れたのか、少しいい顔をしている。かわいい。

それもつかの間で、町長がルフィやシュシュに感化されて憤慨していた。
槍をもって戦うと言いきった町長さんのすぐ脇を、バギー玉が通った。

家たちはもれなく粉々だ。

町長の家まで破壊されて休ませてもらっていたゾロの安否が気になるが、たち煙の中ふつうに起き上がった。

化け物である。

さすがにキレた町長はナミちゃんの制止を振り切ってバギーの元へ駆けた。

町長さんを心配するナミちゃんだけど、ルフィは笑って返す。



「大丈夫!おれはあのおっさん好きだ!絶対死なせない!!」

「こんなとこで笑っててどっからその自信がわくのよ!!」



「俺達が目指すのは"偉大なる航路グランドライン"。
これからその海図をもう一度奪いに行く!」


ルフィはナミちゃんに手を伸ばした。



「仲間になってくれ!海図いるんだろ?宝も。」


「!……私は海賊にはならないわ!」



依然として言葉は変わらないものの、少なくともルフィの言う"海賊"への認識は改まったナミちゃんは、

差し出したルフィの手にタッチして、



「"手を組む"って言ってくれる?お互いの目的の為に!!」



力強く笑った。
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