親を説得したらすんなり受け入れてくれた。
多分メンバーに男しかいないって言ってないからだ。
「まぁ、アンタの部屋見てりゃいつかは出てくんじゃないかなとは思ってたわよ。」
「エヘヘ…」
私の部屋には、いつでも出ていけるように最低限の荷物が入ったリュックと、たくさんの動物図鑑。
考察をたくさん書き込んだメモや、動物の生息地がメモされた世界地図があるという、まぁなんとも色気のない部屋だ。
そりゃバレる。
「お父ちゃんには私から言っとくから、今のうち行ってきな。」
「うん!わかった!」
「いってきます!」
「いってらっしゃい」
***
「「腹へった」」
「食糧1日で尽きちゃうんだもんなぁ。」
三時間ぶっ通しで食べる連中の胃袋舐めてた………
こんな小舟じゃ、2人が満足するような量の食糧なんて乗せられないよ……
「2人とも航海術なかったんだね。私もない。」
「ダメだなぁーー俺たち」
「しょーがねぇ」
2人が空腹で延びてるなか、私は海のなかで泳ぐ魚をスケッチしていた。
「お前絵上手いなぁ」
「ずっと描いてたら上手くなっちゃった。釣り道具でも持ってくれば良かったかな」
「あっても火がねぇ」
「生でも食えんじゃねぇのか?」
「お腹壊すよ……」
その上臭いよ。
何気なく上を向くと鳥が飛んでいた。
逆光になって影しか見えないその鳥を、捕まえて食おうと言い出したルフィ。
手を伸ばして掴んで、そのまま収縮して鳥のもとへ飛んでった。
知っていたとはいえ目の前で人の手が伸びるのは、ちょっとホラーだった。ビビった。
すかさずゾロは私に、ルフィがゴムゴムの実を食べたことを伝え、私も納得するフリをする。
しかしルフィが「はっ!」と声をあげるので再び顔を上げると、ルフィが鳥に頭を咥えられて、逆に連れ去られていた。
「ぎゃーーーーっ助けてーーーっ」
「あほーーーーーーーーっ!!!」
ゾロがオールを漕いで、船の進むスピードが加速する。
私が手伝ったら遅くなるだろうから私は船体に捕まって落ちないように気を付けるだけだ。
風が気持ちいい。
原作通り、行く先に海に浮いている三人の男がいた。
明らかに遭難者な三人に"止めねぇから勝手に乗れ"と言う鬼畜剣士ゾロ。
驚くも3人組は何とか乗り込んだ。
一呼吸置いた3人組は"道化のバギー"の一味だと名乗り、ナイフを取り出した。
この小舟を乗っとる気だ。
「お前漕げ」
「良いけど絶対見失う。」
涼やかに休んでいた私は、どうせゾロの瞬殺だろうと思い全力で漕いだ。
一瞬漕ぐ方向を真逆にしそうになったけどミスに気づいて何とか減速するだけで済んだ。
しかし私の全力もゾロに敵うわけなく。見事宣言通りルフィを見失った。
そして今はゾロによってボコボコにされた三人がオールを漕いでいる。
「てめェらのお陰で仲間を見失っちまった。
とにかくまっすぐ漕げ。あいつの事だ。陸でも見えりゃ自力で下りるだろ。」
「すまんな。か弱くて。」
てめェらの中に私が含まれていそうなのでいの一番に謝ってみた。無視されたが。
三人組が何故遭難していたのかをゾロは聞いた。
話される内容は、原作に描かれた通りだった。
ナミちゃんに騙されて宝も船も持っていかれ、ナミちゃんの得意な天気予報でスコールが吹き荒れてナミちゃんが元々乗っていた船が転覆したのだ。
お陰で3人とも海にドボン。
ホントに心強い航海士だなぁ。
そしてちょくちょく名前の出てくる"バギー"に興味を持ったゾロ。
3人組の真ん中の男から悪魔の実を食べた海賊であることを教えられた。
「あ、ゾロ。陸が見えたよ。」
「お。おいお前ら、あそこに船着けろ」
「「「ハイ!!!」」」
***
「つきましたゾロのだんな!!」
「何だ…がらんとした町だな。人気がねェじゃねェか…」
「はあ…」
この街は、バギーの襲撃を恐れて別のところに住人全員が避難してるんだっけ。
あんな威力のバギー玉なんて撃ち込まれる恐れがあるなら、私だって逃げ出したい。
ゾロのそばを離れないようにしよう。
うろついてバギー玉の餌食にされたら最悪だ。
「じゃあとりあえず、そのバギーってのに会わせてくれ。
ルフィの情報が聞けるかも知れねぇ」
旦那。ルフィ捕まってヤスぜ。
なんて事は言わん。
何でお前が知ってんねんってなるし。
それより危険だ。ゾロのそばを離れてはならない。
ゾロがバギーのところに着く前に撃たれるバギー玉はどこに来るかわからん。さすがに。
「おい。歩きづれェ」
「すんませんゾロの兄貴。"襲撃中"って聞いたもんで……私戦闘に関しては赤子にも負けるレベルなんで」
「使えねぇな」
いや兄貴。赤子舐めちゃあいけません。
あいつらかわいい顔して殴らせない魂胆なんです。
こっちが手を出せないのを良いことに、噛み癖のある奴なんか特に攻撃を仕掛けてくるんですぜ。
そういう恐ろしい奴らなんでさ。
だから子供は好かないんだ。
見てる分にはめちゃめちゃ可愛いけどな。