「……おい、行くぞ」
「はぁい」
ジャンゴを倒し、ウソップは一目散にカヤさんの所へ駆け寄ってきた。
その真剣な眼差しは、原作を知らなくても部外者は席を外すべきだと気を使うだろう。
コテコテのゾロの後ろを、私はよろつきながらついていく。
何度か倒れそうになってゾロの背中を掴むと、文句を言いたげに睨み付けるので怖いったらありゃしない。
あー…疲れた。
こんなにボロボロで、またナミちゃんにバカって言われそうだなぁ。
ナミちゃんにバカって言われるのちょっと嬉しいからいいけど……………いやMとかそういうのじゃないから。
ナミちゃんに心配されるのが嬉しいとかそういうのだから。
勘違いすんなよ。
何度か道を間違えそうになるゾロをなんとか引っ張って港まで着くと、ナミちゃんとルフィが座り込んでいた。
2人以外が見当たらないということは、あの下っ端海賊たちがキャプテン・クロを連れていった後なんだろう。
終わった……ちゃんとほぼ原作と違いなく終えることができた……
「アンタこの前の火傷とか治ったばっかりなのに……」
「えへへ…まぁしょうがないしょうがない」
バカと呟きながら私の頭を小突くナミちゃんの拳には原作で見たような鋭さは無く、やはり皆疲れてるんだと身に染みた。
私もナミちゃんの横に座り込んで、固い地面に尾てい骨があげる悲鳴を無視しながら疲れを癒した。
しばらくすると、ボロボロだけどスッキリとした表情のウソップが戻ってきた。
「ありがとう!!おまえ達のお陰だよ。
おまえ達がいなかったら村は守りきれなかった。」
そういうウソップに、ゾロはウソップがなにもしなきゃ動かなかったといい、ルフィもそれに賛同する。
ナミちゃんは宝に頬擦りして、マジでウソップのお礼がどうでも良さそうだ。
私に関してはあたふたしてただけだから、ありがとうという言葉は貰えない。
そしてウソップは、"ハラに決めたことがある"と胸を張った。
ウソップは、これを機会に海に出ることを決めたのだ。
私はウソップの、ビビりなくせに思いきりがいいとこ、大好きだ。
***
疲れてまたあの定食屋さんで腹を満たしにきた私達。
「………!」
「それ出来るのルフィだけだよ」
ルフィは喉に引っ掛かった魚の骨を取るために、喉まで手を突っ込んで取ろうとしていた。
生で見るとちょっと痛そう。
やっと取れたルフィの頬には冷や汗が滲んでいた。
「バカだな。喉を鍛えねぇから魚の骨なんか引っ掛かるんだ」
「それ出来るのゾロだけだよ」
なんだよ。喉を鍛えるって。
歌手か。
いや歌手も魚の骨引っ掛かるわ。
ナミちゃんは自分が食べ終わった魚の骨をルフィ達に掲げて、普通は骨が残るもんだと教えるが、二人は聞こうともしない。
ご飯は食べ終わったし、そろそろいこうと提案するゾロについていこうとすると、カヤさんが定食屋の扉を開けてはいってきた。
寝てなくて平気なのかとナミちゃんが心配するも、カヤさんの病気は両親を失った気落ちが原因で、それもウソップに励まされてだいぶ回復していたようだ。
カヤさんは病弱な雰囲気など一切取り払って、
"それより"と言葉を続けた。
「船、必要なんですよね!」
「くれるのか!?船っ!!」
そういわれて岸へ出ると、あの夢にまで見た本物のメリー号があった!
思ったよりでかいし、メリー号めっっっっちゃかわいい!
「キャラヴェル!」
手を叩いて喜ぶナミちゃん、可愛い。
執事のメリーさんがデザインした少し古い型の船で、その後はよく何をいってるのかわからなかったけど、
カーヴェル造り?らていーん・する使用?の
せんびちゅうおうだ方式のキャラヴェルだそうだ。
わからん。
大手を振って喜ぶルフィの隣にいたら、メリーさんに船の動索の説明をされた。
くるーがーねっと?やーど?ちょうせつ?
ルフィと難しい顔で聞いていると、ナミちゃんが聞くと進言してくれたので助かった。
わいわいと盛り上がっていると案の定、坂から丸々と太ったリュックと転がってくるウソップが悲鳴を挙げてきた。
助けてやるとかそんなんじゃなく、船に直撃するコースだからという理由でアレを止めるのも、
顔面に蹴りをいれてそのまま踏みとどめる手段もひどい。
メリー号の横の小舟に乗ろうとして、寂しそうなカヤさんはウソップを止めないと言うが、原作を知ってるのでわかる。
めっちゃ止めたいことを知ってる。
恋する乙女かわいいいいいいいいいっ!
そしてやってきましたウソップ勧誘シーン。
にやけるのを押さえてメリー号に乗り込み、ルフィの後ろという素晴らしい席を取った。
小舟に乗ろうとするウソップが、ルフィに振り向いて挨拶する。
「お前らも元気でな。またどっかで会おう。」
「なんで?」
ふふ、ダメだ。笑いがこぼれる。
「あ?なんでってお前、愛想のねぇ野郎だな……
これから同じ海賊やるってんだから、そのうち海で会ったり…………」
「何言ってんだよ、早く乗れよ。」
「え?」
もう笑ってもいいかな。
嬉しさで笑いが止まらない。
「俺たちもう仲間だろ」
「…っにしし!」
「何急に笑ってんのよ気持ち悪い」
「え、ひどい」
大喜びで飛び乗るウソップをみて、私は堪えられずに飛んで喜んだ。
やった、4人そろった。