一隻の小舟と、それよりは一回り大きいバギーの船。

小舟には男性陣のルフィとゾロ。

バギーの船には女性陣のナミちゃんと怪我で起き上がれない私。




「無謀だわ」

「何が?」

「このまま偉大なる航路グランドラインへ入ること!」



顎に手を当てて、思案顔でナミちゃんはルフィへの説得を試みる。

圧倒的に人数が足らない、丈夫な船がない。

その2点を伝えたかったナミちゃんは、てっきり食糧や酒の心配だと勘違いしたバカ2人に突っ込んで地図を広げた。



「近くに陸でもあるの?」

「この地図をみる限り……大陸があるわ。5時の方向に旋回して!」

「じゃあそこに船あるといいね」

「大陸だから…お金持ちの1人や2人いると思うけど…」



そうして、ナミちゃんの指示通りに船を進めて、
早朝のうちに大陸の岸へと船を止めることができた。

緑豊かで、小さな島が多いこの世界では珍しく、大きな山が複数連なった立派な島だ。


「この奥に村があんのか?」

「うん。小さな村みたいだけど」




えっと、たしかあの辺にいるんだっけ?

ウソップ、にんじん、ピーマン、たまねぎ。

正義の嘘つき、ウソップ海賊団。


ゾロが4人に気がついてルフィとナミちゃんがようやく気がつく。

気取られてびびった野菜少年3人はウソップを置いて逃げ出してしまった。
が、ウソップは仁王立ちして、得意のあの台詞を叫ぶ。



「おれはこの村に君臨する大海賊団・・・・を率いるウソップ!!!
人々はおれを称え、さらに称え"わが船長"キャプテン・ウソップと呼ぶ!!!」


ふああああっ!!

ウソップの初嘘だぁぁぁぁぁあ!!

なんだか嬉しい……

にやけそうなのを必死で抑えてる間に、あの"八千万の部下"の嘘を言ってナミちゃんにバレて、"バレた"と口にしてしまった。

なんだかんだ明るいルフィとウソップは意気投合。

小さなレストランに案内されて、私たちは席に着こうとした。




「えっ、ちょ、ま、ゾロ、ナミちゃ……」

「早い者勝ち早い者勝ち」

「悪ぃな。そういうことだ。」


「?どうしたー?早く座れよアキ!」



いやだ。ルフィの隣は嫌だ。

いや目の前も嫌だけど……隣の方が酷い。



ルフィの食べ方は汚い。それはもう、何故そこまで?と聞きたくなるほど。

食べかすが周りに尋常じゃない被害を及ぼすんだ。

ルフィは人の目を見て話すから、当然食べながら話せばその方向に食べかすを飛ばす。

他の席はテーブルを挟んでいるからそこまで届かないけれど、

隣の席に座り話しかけようものなら地獄だ。


早々に一番安全な席取りやがって………許さんぞ……ゾロ………




一通りの腹ごしらえを終えて、私達はウソップにこの島へ訪れた理由を説明した。

そしてウソップの心当たりはただ一つ。カヤさんの家。

村で唯一の場違いな大富豪の屋敷。その病弱で寝たきりのいたいけな少女が主の屋敷だ。

一年ほど前に病気で両親を亡くし、莫大な遺産とでかい屋敷と十数人の執事たちを残されたカヤさん。

その話を聞いて、ナミちゃんはカヤさんに頼るのを辞めると言った。

そんな状況のいたいけな少女に船を頼るのは彼女の良心が許せなかったようだ。

ルフィも、急ぐ旅では無いとこの村では食糧の買い込みだけにしようと笑った。



「ところでお前ら、仲間を探してると言ってたな…!」

「うん。誰かいるか?」


人差し指を立てて提案を持ち出すウソップに、またも宛があるのかとルフィは耳を貸す。

今度は親指を立てて自分を指し、キリリとしたキメ顔で


「俺が船長キャプテンになってやってもいいぜ!!!」


と口にするものだから、私達は丁寧にお断りをした。


「「「「ごめんなさい」」」」

「はえェなおい!!!」



考えるもなく我らが船長はルフィだけなのだ。



「………おっと時間だ。役に立てなくて悪ィな。用があんだ。」

「あらそう、こっちこそありがとう。」



ウソップはそのまま店を出た。

あ、これはカヤさんのとこに行くやつか。

懐かしい……あのシーンを見たときの私は名作少女漫画を見ている気分でとても幸せな気持ちだった……

はぁ…尊い………



それから数分もしないうち、あのウソップ海賊団のちびっ子たちが現れた。

彼らは自分のキャプテンがいないことに不安げな顔をするも、果敢に私達へ向き合ってキャプテンの所在を聞いてきた。

タイミングの悪いことにルフィが肉が旨かったと笑うものだから、キャプテンが私達に食べられたのではと怯えるちびっ子たちが可愛くて、

笑ってしまう私とナミちゃん。

ゾロは追い討ちを掛けるように人相の悪い笑顔で"喰っちまった"と怯えさせる。


ここでゾロに怯えるならわかるが、先程まで"鬼ババア"の話をしていた彼らは女である私とナミちゃんを見て悲鳴をあげた。

失礼な。



落ち着いたちびっ子に先程ウソップが"時間だ"といって出ていったことを伝えると、彼らはすぐにカヤさんの所へ行ったと見当がついた。



「何しに行ったんだよ」

うそつきに・・・・・!」

「だめじゃねェか」

「ははっ」



いかん。笑いが漏れてしまった。

ここでオーバーではなく冷静に"だめ"と判断するルフィは、いつもなんだか笑えてくる。

卑下するための言葉じゃないのが分かってしまうので、ちびっ子たちも笑いながら返す。



「だめじゃないんだ!立派なんだ!な!」

「うん!!立派だ!!」




我らがキャプテンウソップは、正義のウソつきだからね。
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