ナミが笑ってくれた。
それだけでこんなに安心する。
それを教えてくれたことには、この島に感謝してもいいかもしれないわ。
「ナミ、次の島でショッピングの約束果たしましょ」
「当たり前でしょ。アンタに合いそうな服、ずーーっと考えてたんだから」
私は痛む身体に鞭を打ち、ゆっくりと起き上がった。
「チョッパー、終わったら手当てお願い」
「任せろ!」
頭を打ったのか、少しぐらつく。
首元に手を添えて支えながら立ち上がり、服に着いた砂ぼこりを右手で払う。
「ロビン、この島の歴史ごとぶっ壊すけど…構わない?」
「残念だけど…あの島長さんの部屋に色々有りそうね」
「はは、隅から隅まで漁るといいわ!」
何度か軽く跳ねて脚の具合を確かめると、脚に関してはあまりダメージはなかった。
重症は左腕のみってとこかしら。
「ゾロ、この島にすらその馬鹿正直な戦い方がダメだと教えてくれる強者はいなかったようね」
「お前ェと比べりゃ屁みたいなモンだ」
乱れた髪を払って整える。
気を遣っていたキューティクルがこの一日で痛んでしまった。
落とし前を着けなくちゃ。
「アイ!これ使え!」
「!」
遠目で島民から逃げるウソップがパチンコで飛ばしてきた物は、
肘まで覆う長いガントレット。
なんだ、これ
「ウソップ様特製ガントレット!"突風籠手"だ!
ナミみてェに細かい説明はねぇ!腕に付けてただ殴れ!」
「…………これ、ずっと作ってたの?」
「空島でいいもん手に入ったからな…」
約束の、私専用の武器。
私を無敵にしてくれる、ウソップの武器。
「ありがとう、ウソップ」
「よーし!それでオレを守れ!今すぐに!」
「ルフィー!」
「おいこら無視かッッッッ!!!!!!!!」
私はギャーギャー騒ぐウソップを無視して、帽子を被り直すルフィに声をかけた。
ガントレットは、いつサイズを図ったのか知らないけどピッタリ私の腕にハマった。
「長にね、負けそうなの」
「お前が?冗談だろ」
「ええ、冗談よ。」
さっき吹っ飛ばされた私を見て、ケロリと"冗談"と言ってのける船長。
鬼か。
でもそれぐらいの度胸じゃなきゃ困るわ。
それぐらいじゃなきゃ、背中を任せられない。
「左腕くらい、いいハンデよ。
そっちの男達は任せたわ!」
「おう!」
ようやく立ち込める砂埃からバルマが歩いてきた。
奴は一言「死ななかったのか」と感嘆し息を吐いた。
死ぬわけないでしょタコ助が。
私は未だゆっくりと歩くバルマに素早く距離をつめ、右足で蹴りをいれた。
簡単に止められ、私の脚を掴もうとするバルマの左腕を、反対の脚で蹴り拘束を逃れる。
「私のような強い天小人が、
たかがゴリラ程度のパンチで死ぬとでも?」
「ハッ、私の拳がたかがゴリラとは…面白い」
「なにアイツらの会話。ゴリラをまるで蟻んこみたいに言うじゃない」
「やっぱ普通じゃねぇ」
ガントレットを付けた右手を数回握って、調子を見ると重さも感じることなく、スムーズに動かせる。
邪魔じゃないし、ウソップのことだから何か仕込みがあるんだろう。
「さて、そろそろ本気を出してもらおうかしら。」
「よかろう。全力で捩じ伏せてくれる。」
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