20000打記念企画 | ナノ



なんだか近頃ナマエの様子がおかしい。
ぼーっとしていることが多いし何をやっても上の空という感じだ。
現に今も話しかけているのにまったく反応がない。

「ナマエ、おい、ナマエ聞いてるのか」
「あっ…ごめんフェイちゃん、呼んだ?」
「さきから呼んでたよ。あといい加減フェイちゃんて呼ぶのやめるね」
「えー、なんで?可愛いじゃん」

一発でこぴんを食らわせてやるとナマエは甲高い声を出して身悶えている。ああ面白い。

「いったぁああ、!ちょっとくらい加減してくれてもいいじゃない!」
「仕置きに加減もくそもないね。それとも拷問の方がよかたか?」
「いや、いいです…仕置きで十分です…」

涙目になって額を抑えているナマエが妙に可愛かったからナマエの唇に軽く口づけをくれてやった。
不意に人肌が恋しくなっただなんて、口が裂けても言うものか。

「なっ、フェイちゃん…!い、いきなりどうしたの、」
「別に。したかたからキスしただけね。文句あるのか?」
「ない!まったくない!」

甘えてくるナマエの気が済むまで啄ばむようにキスをしてやる。
最後にぎゅううと抱きしめて立ち上がった。

「そろそろ行くよ、仕事の時間ね」
「うん…気をつけて」

名残惜しそうにナマエが再びワタシに抱きついた。
ぽんぽんと頭を撫でるとワタシの胸に顔を埋めるナマエ。なんだか、くすぐったい。

「今度はいつくらいに、帰ってくるの?」
「1ヵ月くらいは戻てこれないね、たぶん」

そっか、とナマエは呟いた。
ワタシだってナマエと片時も離れず一緒にいたいけど、お互い住む世界が違うからそんなことはできない。
本来、ワタシとナマエは出会うこともなかったのだから今こうしてお互いを好いているという事実はとても幸せなことなのだ。
コートを掴んで玄関へと向かう。
そろそろ行かないと団員達が文句をたれて煩いだろう。

「それじゃあ、行てくるね」
「行ってらっしゃい」

次にナマエと会うのは1ヵ月後あたり、か。
ゆっくりと深呼吸をして玄関のドアを開けた。



***



「ナマエ、ただいま」

玄関口でそう声をかけたのだがナマエは一向に迎えに来ない。
いつもなら、ドアが開くのを聞きつけたら真っ先に迎えに来るのに、おかしい。
訝しんでいると体に突き刺さるような殺気が居間の方から送られてきた。
身構えると同時に一直線に飛んできた何かをしゃがんで避けると玄関のドアに小気味いい音を立てて刺さっていった。

「ナイフ…?」

カツンカツンと足音を響かせてフードを被った人物が10人程出てきた。
勢いよくドアが開かれて外からも10人ぐらいがそれぞれ武器を持ちワタシに攻撃する頃合いを見計らっているようだ。

「お前ら、ここの住人に何かしたか」
「さあ。もしかしたら殺したかもしれないですねぇ」

くつくつと笑い声を上げる男の懐に潜り込み心臓へと手を突っ込む。
血管を引き千切り脈を打っている心臓を握り潰すと真っ赤な血が顔に降り注いだ。

「今のワタシの機嫌は最悪ね。逃げても皆八つ裂きにしてあげるよ…!」



ナマエと生活していたこの部屋は依然の面影がない程に血で染まっている。
手足やら内臓やらが飛び散っている床を歩くとぐちゃぐちゃと肉が爆ぜる音が微かに響いた。

「…なんだ、まだ残ていたのか」
「…。」

相手は無言でナイフを構えた。
どうせこの床に転がっている肉塊になってしまうのに、諦めの悪い奴だ。
ふわりと空中に何十本ものナイフを浮かべてこちらの出方を窺っている。どうやらこいつは操作系のようだ。
一歩前に距離を詰めると雨のようにナイフが降り注いできた。
一気に速度を上げて賊の首元へ手をのばし、そして切り裂いた。
びゅっと鮮血が飛び散り今度は天井を汚した。
あぁ、もうここには住めないななんて場違いなことを考えていると最後の賊もついに床に倒れ込んだ。
ナマエを探そうと居間に足を向けると、微かに声が聞こえた。

「ナマエ…?どこにいるね…!」
「フェ、イちゃ…」

ぞわりと背筋が震える。
久方ぶりに冷や汗が背中を伝っていくのを感じた。
ナマエの声は居間からではなく、後ろの死体が転がっている方から聞こえてきたのだ。
後ろを振り返るのが恐ろしくて体がなかなか言うことをきかない。
意を決して後ろを向くと、先程首元を切りつけてやった奴が弱々しくワタシに向かって手をのばしていた。
呼吸が乱れるのを必死に押さえて歩み寄る。心臓がちくちくと痛い。
微かに震えている手で首から血を垂れ流している奴のコートを掴み、ばさりと剥ぎ取った。

「な、んで…どういう…ことね、」
「ごめん、ね、フェイ…ちゃん」

ぼろぼろと涙を零してナマエはワタシを見つめていた。
息を詰まらせながらナマエはぽつぽつとワタシに話しかけてきた。
賞金首である自分を殺すために近づいてきたこと。
そして仲間達にここの場所を教えたこと。
ワタシは呆然としてナマエの話を聞いていた。
今まで信じていたものががらがらと崩れていく音がはっきりと耳に残った。

「でも、ね…、フェイちゃんが、好き…なことは嘘じゃ、ない…」
「…。」
「信じて…くれなく、てもいいよ。でも、本当に…好きだったんだ…」
「ナマエ、」

いままでありがとう、と言い残してナマエは呼吸を止めた。
まだこんなにも暖かいのにこの体はもうもぬけの殻になってしまっただんて、信じたくもない。



できることなら赤ペンで
物語を修正したかったけど



腕の中の彼女は冷たくなっていくだけだ。





初フェイタン夢。
次はやんでれフェイタンの話とか書きたい。

(12/08/17)





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