20000打記念企画 | ナノ



ざあああと雨が降ってきた。
地面に転がっている死体から溢れた血溜りが流れていく。
アジトに帰るまで降らなくてもいいのに。
土砂降りには程遠いのだがあっという間に全身ずぶ濡れになってしまった。

「あーあ、びちゃびちゃになっちゃったよ…」

でもまあ返り血が流れてくれるし、これはこれでいいかな。
そう考え直すことにして帰路につくことにした。
ぴちゃりぴちゃりと雨を弾かせて足を進める。
雨は弱まるどころか降り出した頃に比べると激しさが増してきている。
垂れてきた前髪を掻き上げていると、前方に人影が見えた。
さっきの奴らはまったく歯応えがなかったし、憂さ晴らしに狩ってしまおうか。
ただ歩いていただけなのに殺されてしまうだなんて、相手にしたら考えもしないことだろう。
唖然とした表情を浮かべて死んでいく様を連想してみるとぞわぞわと背筋が震えた。
トランプを数枚手に取りこちらへ歩いてくる相手の様子を窺う。
傘を差しているので顔は見えないが、体系的に女だろう。
すれ違った時に殺すかどうか思案していると刺すような殺気が降りかかってきた。
それと同時にとても見知った念であることに気づく。
なあんだ、彼女か。また誰か殺せると思ってたのに、残念。

「なに私のこと殺そうとしてるんですか」
「まさかナマエだとは思わなくてさ。許しておくれよ」

眉間に皺を寄せてナマエは僕を睨みつけた。ああ、その表情たまらなくいいなぁ。
すると彼女は無言で僕に傘を持っていない方の手を差し出してきた。
握られていた手には、もう一本の傘があった。

「もしかして、わざわざ届けに来てくれたのかい?」
「…みんなが持って行けって、言うから、仕方なくです」

ぷいっと顔を背けてナマエは呟いた。嘘ばっかり、と言いそうになったが間一髪、飲み込んだ。
言ったらきっと彼女は激昂するだろうし。
第一僕のことを気遣ってくれる団員なんて君くらいなんだよね。
きっと他の団員は僕が死んだって何も思わないんだから。マチなんか特にそうだろう。

「ふふっ、ありがとうナマエ」
「あっ!…なんで私の傘を取るんですか、貴方の分もちゃんとあるのに、!」

ナマエが持っていた傘を手に取ってナマエに密着する。
だが彼女は反対に僕から離れた。せっかく濡れていなかったのに、あっという間にナマエの体が雨に触れていく。

「君も濡れちゃったら意味ないじゃないか…。ほら、こっちにおいで」
「うわ、ちょっと…!」

ぐっとナマエの腕を引っ張ってそのまま肩に手を回す。
ナマエはじたばたと暴れていたが僕との力の差に諦めがついたのか、大人しく同じ傘の下に収まった。

「…傘2本持ってきた意味がないです」
「せっかく傘を差すならこうした方がいいに決まってるだろ」

くすくすと笑い声を上げるとナマエが文句ありげに僕を見上げた。

「あぁそうだ、アジトに戻ったら一緒にお風呂でも、」

鈍い音を立てて脇腹にナマエの肘が食い込んだが、あまり痛くない。
なんだか猫が甘噛みしているようだ。
あとナマエの頬が微かに赤いのは僕の見間違いってことにしておいてあげよう。



幸せに対して貪欲になること
(君はもうちょっと素直になるべきだよ)
(はい?いきなり何言いだすんですか)






初ヒソカ夢!
やっと甘めの話が書けた。

(12/08/17)





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