「彼女は、俺の」
名前を呼ばれ、驚きに目を見開く。
気が付けば、赤司がすぐ側の壁に手をついて慈海を見下ろしていた。
彼の射抜くような瞳を直視することが出来ず、顔を俯かせたまま「……こんにちは」とだけ言って口を閉ざす。
「え、誰か他にいたんスか?」
慈海という予想外の存在に興味津々な様子で顔を覗かせたのは、先日体育館のギャラリーに案内してくれた黄瀬だった。
「あれ、あんた……」
「なになに、誰ー?」
「赤ちん〜、この人誰〜?」
更にぞろぞろと人が集まってきて、居心地が悪いことこの上ない。
「ああ、知っている奴もいるだろうが、彼女は三年の嵩原慈海。……家同士の付き合いで知り合った。俺の――」「征十郎君」
赤司の話を遮るように声を上げると、彼は少し眉を潜め、その他の全員が目を見開いた。その反応は分からないでもない。彼の話を遮るなど、彼を知る人間からしたらあり得ないことだ。
「……バスケ部主将就任、おめでとうございます。それと、ミーティングの邪魔をしてごめんなさい。私はこれで」
彼の目を見ることが出来ず、俯いたまま早口に言い切り、逃げるように屋上を後にした。
赤司side
たまには場所を変えてミーティングをしようと思い、昼休みに屋上へ向かうと、そこには慈海がいた。
直接会うのはこれが二度目だが、相変わらず彼女は俺の目を見ようとしない。もともと人見知りをする質だとは聞いていたが、彼女の姿には怯えさえ窺える。
彼女が逃げ去った後、その場に居合わせたバスケ部員全員からの「何なんだ一体」とでも問うような視線が集まる。
「ああ、彼女は照れ屋でね。あまり俺達の関係を話されるのが好きじゃないようなんだ」
「言うなら勿体ぶらず早く言え。言いたくて仕方がないという顔をしているのだよ」
「俺に命令するのは気に食わないが……いいだろう」
正直、慈海のことは最初はどうでもよかったのだが、先日バスケ部の見学に来た時に面白い予感がした。
まるで新しいおもちゃを見つけた子どものような、楽しげに笑う自分に更に笑いが込み上げる。
「彼女は、俺の婚約者だ」
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赤司さん無双
「キセキ全員出ますとか言って、出ただけで殆ど喋って無いし」と思った方もいらっしゃるでしょう。すみません。
書いてる人間自身も思ってます←
大まかな流れだけ決めて細かいとこノープランだとこうなる。
2014.02.15
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