「いつまでそこにいるんだ?」
「何をしているんだ」
凛とした声が響き、慈海はその声が好ましくない相手のものであることに気付き身を強張らせる。
振り返ると、赤い髪と赤い切れ長の目が特徴的な、見た目からして聡明な印象を受ける少年が、屋上の入り口に立っていた。
「黒子、青峰を探して連れてこいと俺は言ったのだが?」
少年の視線が、言い合いをする二人の少年に向けられていることに安堵する。慈海は入り口とは反対側の壁の陰に静かに身を隠した。
「分かってますけど……青峰君の不適切な行動を止めていたら、時間がかかってしまいました」
「おいテツてめッ、それは赤司には言うなよ!?」
赤司――先程の赤い髪の少年の名前を聞き、間違いではなかったと確信する。彼には、一度だけ会ったことがある。同じ学校であることは最初から分かっていたが、出来れば卒業するまで関わりたくはないと思っている。
その赤司が、何やら少年二人に問い質している。どうやら、黒子が授業をサボった青峰をバスケ部のミーティングをするために呼びに来たらしい。
「まぁ、どうせ屋上で居眠りをしているだろうと思って、全員連れてきたがな」
「……それ、先に言って下さい」
少しふて腐れたような黒子の声が聞こえて、すぐに話し声が賑やかになる。また数人生徒が屋上に上がってきたらしい。
「黒子っちー!パン買ってきたから機嫌直して!」
「黄瀬、煩いのだよ」
「本当です。そんなに大声を出さなくても、この距離なら聞こえます。……パンは、ありがとうございます」
「黒子っちがツンデレ!?」
「黄瀬ちーん、うっさーい」
「さつき、俺の飯」
「はい、お弁当作ってきたよ」
「……購買行ってくる」
「え、ちょっとー!」
急に騒がしくなる屋上内。会いたくない相手がいる以上、どうにかしてこの場を離れたいのだが、今上がってきた生徒達が入り口付近に溜まっているようで出ていくことが出来ない。
時間は勿体ないが、ここで身を隠しながら残りの昼休みを過ごすしかないだろうと決意する。
だが、その考えは甘かった。
「ところで――慈海はいつまでそこにいるんだ?」
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赤司様の扱いに困る。
漸くキセキが全員出ます。
2014.02.15
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