ツイッターろぐ2 | ナノ






これの派生
※後半だけやらしい表現注意







子猫が言峰邸に住まうようになって約三ヶ月間。もうその頃には子猫の名前をいくら『きりつぐ』から変えようにも変えられなくなっていた。

少し離れたキッチンで昼食の支度をしている言峰がきりつぐ、と呼べば尻尾をぴんと直立させにゃあんと鳴いて近寄っていくのを見送る。
猫は名前を呼ばれて返事をするのは好きな人のみだという。ちなみに僕が自身の名前を呼ぶなんて恥ずかしくてたまったものじゃないから呼んだことはない。それに僕が名前を呼んだって返事をしないことは大方予想はついた。

言峰のきりつぐ呼びに慣れる自分もどうかと思うが致し方ない。床に這いつくばり頭だけ上げた体勢で、ため息混じりに雑誌を捲る。
ふと視界に入った床に落ちている小さな袋。先ほど言峰が買い物袋をキッチンまで抱え運んでいるときに落下したのだろう。片手で拾い上げると粉状になったマタタビらしい。無表情の冷徹男が猫のきりつぐを想いながらこれを買っている姿を想像して思わず笑う。同時に本当にきりつぐが好きなんだなと思って妬いた。
「言峰、ここにマタタビを置き忘れてるぞ」
以前のことを思い出してそこまで子供に成り下がりたくないと念を込め、自然に呼び掛けるが相手には聞こえなかったらしい。猫も近くにいない。
一枚ぐらいいいかと悪戯半分で粉状になっているマタタビの袋を開けてみる。
「っ!」
バッと勢いよく開封したため茶色っぽい粉が頬に付着して、さらに最悪なことに口にまでマタタビが入った。幸い床にまで散らばることはなかったが頬や唇についた茶色の粉を手の甲で拭う。
最悪だ…
綺礼に見られなくてよかったなと思い馳せながら、不幸に恵まれた自身に眉を寄せる。別段開けてどうするという考えもないままだったためこれ以上痛い目に合いたくないとの考えから、おとなしく袋を閉じて再び雑誌に目を落とす。
自らの行いにうんざりしたが、その邪念を捨て言峰の作る昼食を待つことにした。麻婆豆腐でないことを願って。


ふと、にゃあん、と高い鳴き声がした。目の前から。
全く気配に気づかなかった。それもそのはず。うつむいて雑誌を読んでいたから眼前に意識を飛ばせるわけがない。どうしたのかと疑問を抱えて顔を上げると目の前には見慣れた白猫がすんすんと鼻をひくつかせて、衛宮の顔の匂いを一生懸命嗅いでいた。
「…え」
自分から絶対に近付いてこなかったきりつぐがいま近くにいるのことがまず驚きで、思わず硬直してしまう。マタタビか、と思い出して失笑した。子猫と成人猫の中間をさ迷うこの猫にとって、きっと生理的現象なのだろう。しかしそれでも唇に鼻を押し付けられた時には笑みがふわりと溢れてしまった。
熱心に匂いを嗅ぐきりつぐがもう一度にゃあんと愛らしく鳴く。
するとピンク色の鼻から頬にかけてを僕の頬にすりすりと擦り付けてきた。しきりに頬を寄せる動作が唇を掠めてくすぐったい。
「…ふ」
普段あれだけそっけなくされて一変、この甘えぶりに微笑んでしまう。瞳の大きな白猫は目を細め喉をぐるぐる言わせ、まるで好きだ好きだと伝えるように顔を押し付ける。
「よせって…、くすぐったいぞ」
言葉とは反するが、猫独特の柔らかな毛並みと寄せてくる体温があまりに心地よくて手放したくない。

「…きりつぐ」

やさしく名前を呼んでやればにゃーとひとつ返事をし、撫でてと伝えるように顔だけでは飽きたらず手にも擦り付けてきた。それに答えるため、綺礼がいつもしているように白い体躯の体に手を伸ばし、撫でようとした。
その時だった。

ガシャーンと派手な音がリビングに響き渡る。
猫は大袈裟なほど体を跳ね上がらせると一気に毛が逆立った。衛宮も同様に肩を震わせる。音がした方を見ればエプロンをした言峰がこちらを見て呆気にとられている。あの派手な音の原因はどうやらテーブルに運ぶはずだった皿が床に落ちて割れるものだったらしい。言峰の手は皿を持っている形で静止していたし、皿は足元で見事にバラバラに破壊されていた。

猫は初め何が起こったのか円らな瞳を開いて仰天していたが、やがて何事もなかったかのように頬にすりすりし始める。言峰と衛宮は互いに見つめ合っていたが、頬に寄せられた猫の体温にハッとなった。
「おい、皿…」
衛宮の言葉に言峰もようやく意識を浮上させ、粉々に砕かれた皿に目を落とす。ああ、と無感動にソレを見つめるとまたこちらを見てきた。割れた皿を片付けるかと思いきや、スリッパでそれを踏み分けこちらにずんずんと容赦なく近づいてくる。
おそらく衛宮でなくともわかる。なんか知らないけど怒ってる、と。
猫も猫でその殺気に近いものに気づきソファーの上へと素早く避難する。あいにく僕は猫並みに動きは速くない。
「え、…ちょっ…待っ」
落ち着けと言うより早く近づかれ彼はしゃがむと手首を痛いぐらい掴んで引き寄せ、乾いた唇を押し付けてきた。グロスを塗った女じゃあるまいし、柔軟に対応できるほど僕は慣れてない。あまりに突然すぎて舌を噛みそうになる。
「ん、ぅっ…ん、ん!!…ちょ、ッ……」
乾いた唇を激しく押し付けられて痛い。それに背を反らした体勢を持続させて口付けられているから腰も痛い。二つの意味を込めて反論しようとするが、綺礼は頬を捉えて離さなかった。唇の隙間からなんとか止めてほしいとうったえたが聞く耳すら持たない。
「……ん、……っぅ」
舌を絡ませ始めると次第に唇が潤って激しさを増した。息がしにくい。舌を吸われて、歯茎を舐められて、頬裏を荒らされて、苦しい。息が上がる。熱い。舌が重なるたびにいやらしい水音が響き、眉をしかめて息継ぎをした。これだけ口内を好きなだけ蹂躙されると抵抗の力すら湧き上がらない。
「ん…」
どちらのものかわからない唾液が顎をゆっくりと伝うと、体がぞくりと震えた。フローリングにぱたっと落ちたその音すらも卑猥。
そっと目を開くと綺礼の茶色の前髪が見えた。その分け目から伺える表情は柄になく必死そうで、眉間に皺が寄っていた。まつ毛はやさしく震えながら僕の唇にすがり付く。彼の見せたことのない表情に心のなかで笑ってしまった。
なに必死そうな顔してんだ馬鹿、と掻き回される舌を甘く噛んでうったえる。そしてもう一度目をぎゅっと閉じた。
頬を捉えていた言峰の手が肌を滑り首筋にたどり着くと、ワイシャツのボタンを忙しなく外してゆく。
破いてしまいそうなほど切羽詰まった綺礼に心臓が震えた。ボタンを胸まで外して服を開くと、満足したのかようやく唇を解放してきた。



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