mittens1 | ナノ





※原作ログアウト





闇が、動く。

屋上にいるのは二人。一人は仕事を淡々とこなす、頭から手袋、靴までどこまでも闇に紛れる細身の黒の人。そしてもう一人は首に十字架を下げ、黒の人の銃構えを無感動に見つめる骨格のいい男。暗闇の中、黒の人である衛宮切嗣はスコープを右目で覗き、穏やかに、静かに、人間を狙う。これから行われているのは外で行う取引だ。
こんな公の場である外で取引を行うなど、此方からすれば鹿の子が百獣の王の巣へ赴くようなもの。
目標はただの馬鹿か、能無しか、はたまた―――

「特に罠である可能性は極めて低いだろうな。相手は闇取引の傭兵だ。警戒には及ぶまい」
僕の考えていたことに気づいたのかありのままを代弁してくれた言峰綺礼は、無表情だがどこかおもしろくなさそうに目標の相手を見つめる。上層部の連中が指示したのだ。遠距離を専門とする僕と、接近攻撃派を得意とする彼、言峰では相性がいいだろう、と。

…全く、迷惑な話だ。

相性もなにも仕事上では気に入らないぐらいマッチしているが、性格的な相性はむしろ逆だ。二人で組んでから長くは経つが、僕自身、未だに解せない。この男の考えていることなど、未だに分からないのだ。

WA2000を構える僕のななめ後ろ横に膝をついて座り、彼は手を擦り合わせていた。視界の端にとらえた言峰の手指は真っ赤だった。
「寒いのかい?」
「‥‥」
彼の無言は肯定の証。
意識せずに呼吸をしていても白い息が舞うほど今日は冷えている。上から下まで防寒対策をしている僕に対し、言峰はいささか薄着だ。しかし今から人を撃ち殺すというのにコイツの寒さの心配などしていられない。

彼を無視してスコープを覗き、目標の人物に焦点を合わせる。撃ての合図は携帯のバイブが二回鳴った時。今いる僕ら以外に観察役がビルのあちこちにいる。その観察役である彼らが判断して僕が撃つ。つまりは、僕らは殺人のみに特化した役柄であり、悪く言えばマシーンである。独断は許されない。いつ、何時、殺せる準備をしていなければならないのだ。

だから言峰の寒さなどどうでもいい。
放っておけばいい…。



しばしの沈黙。言峰にしては静かだなと思った矢先だった。背後で衣擦れの音がしたと思えば背中に伝わる急激な外の冷気。さらに、というかもっと悪いことに言峰の冷えた手の全面が、あろうことか背中に押し付けられた。ぴとっと。
「ひっ……、…!!?」
触れられた瞬間ビクンと体が跳ね上がった。全身の肌が悲鳴をあげてじわじわと鳥肌がたつ。スコープから目を離し、出てきそうな悲鳴をなんとか飲み込む。
どうやら僕の服を捲りあげて、心地よく暖かい場所を見つけたらしい。
「な、何を……っ…」
振り返り抗議することは叶わなかった。何せ言峰は僕の背を包みこみ、抱きしめるように体を寄せそれでいて服の下から暖かい背を撫でるのだから。




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