夢の時間はもうおしまい | ナノ


※アーチャーが主設定




また我が主の機嫌を損なう真似をしてしまったらしい。一体何をしたのだろう。気だるいはずがやけに体が軽くスッキリした意識の中、真っ白で高い天井を見上げたまま昨日を思い出す。
昨日は館の中に侵入者がいたため早急に追い払った。そこまで強い相手ではない。この宝具があれば殺すのは容易かった。
『雑種は追い払え。殺すのが貴様の役目ではない』
以前から主に言いつけをされていたため、侵入者である他のサーヴァントを適当にかすり傷をつけて館から出した。右頬には追い払う際受けてしまったかすり傷のみ。
昨日はそれだけだ。
それともあのサーヴァントがどのような宝具で、真名は何なのか、誰がマスターなのか、そこまで突き止めなかったのが不機嫌の原因なのだろうか。
「‥‥‥‥‥‥」

ランサーは考えるのをぱたりと止めた。
不機嫌の理由が何にせよ不機嫌をぶつけてくるということは少しは解消してくれただろう。それだけで我が主が納得するのならばいい。原因は直接聞いてわかれば最善。
もういいかと思い、侵入者の気配がないか周囲一キロ圏内まで気を配る。より集中するためゆっくりと瞼を閉じてゆく途中で隣から気配。

「クク‥‥。貴様、そんな集中せんでも侵入者など当分来るまい」
「あ、るじ‥‥!起きておられたのですか。とんだ無礼申し訳ありませ」
「よい。それよりも貴様の用を続けろ」
寝息があったのは分かっていたがまさか起きていたとはサーヴァントとしてあらぬ失態。言葉を切られ指示された命に従い、館周囲の一時的な警戒をしながらふと思い返す。

昨日どういう理由か機嫌を悪くした我が主はいきなり強引に寝台に連れ込み辱しめをさんざん強要し、終いには何度意識を失ったかわからぬほど体を繋いできた。
何度か体を繋いだことはあっても、これほどまで抱かれたのは初めてだった。いくら魔力供給とはいえ、並々ならぬ魔力を注がれて快感を感じられずにいられない者などいないはず。‥‥まぁそれも、ただの言い訳にすぎないが。

「‥‥‥」
「どうしたディルムッド。集中しきれていないぞ」
昨夜の行為を思いだし、徐々に頬へ血が溜まっていく感覚が肌下からわかる。それを見越しての甘い囁き。
「ッ‥‥主!」
最後の抵抗とも言えるぐらい少し声を張り上げ威勢よく睨み名を呼んだがそれも難なく流された。
今はシーツで覆っているもののまだ全裸と同じ状態に在る。それに加え吐息混じりに左耳へと注ぎ込まれる主の声にすら、敏感に反応してしまう。肩をびくりと揺らせばふっと笑みを溢し追い討ちをかけるよう舌で耳を愛撫してきた。
嗚呼ほんとうに、意地悪な方だ。

「‥ひ、っぁ」
「まぁそう緊張するでない。朝からぺろりと食べるほど我は非道ではないからな」

一時的な館周囲の警備が終わり、のろのろと瞼を押し上げ我が主に目線を合わせる。金糸の髪が揺れ朱に光る主の目は、獲物を捕らえた目そのもの。
見るからに昨日と比べていくらか機嫌はよくなったらしい。唇を幾度か奪われながら昨日の原因を知りたいと聞きたがったが、どうにも接吻が邪魔で言うに言えない。
唇を傾けわざと深い口づけをしかけてくる相手に次第に呼吸が乱れてくる。
「‥‥っん、ん‥ふ、‥ッぁ、‥‥じ‥」
舌を入れられ頬裏や前歯を舐められ、己の舌を吸われる。くちゅくちゅぢゅっ。淫猥な音に耳を塞いでしまいたかったがこの場で許されるわけない。
何かにすがるように主の二の腕に手を置いて必死にしがみつく。そうでもしないと意識が飛んでしまいそうだった。
「貴様の考えていることなど容易く想像できるわ。昨日の我の機嫌の原因が、一体何なのか、己が原因なのか知りたいのだろう?違うか?」
ようやく解放された頃には唇の端から相手のものか己のものかわからない混じった唾液が溢れ、より一層ディルムッドを卑猥に見せる。
ディルムッドはそれどころではなかった。再び熱をもった体を押さえつけるため、必死に自制しようとしていた。
そんな彼に構わず王はただ我が僕の姿を見据えながら簡潔に答えた。


夢の時間はもうおしまい

「我が物に傷を付けたのだ。愛着が沸いているものほど傷をつけられれば怒りを覚えるのが当然であろう?」




20120108

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