うつくしい人




赤司はきれいだと思う。
ただし、男の中ではの話だ。




グラウンドがちょうど見える窓から顔を出して、登校時間の学生を眺める。朝練があるせいでいかにも遅刻しそうな青峰が毎日遅刻せずに来れている理由は、ひとえに部活のおかげと言っていい。そしてこうして毎日グラウンドを眺めるのが日課だった。
眺める理由は、かわいい女がいないか見るため。

「あ、赤司だ」
腕をぶらぶらさせて上から見ていると、赤髪は嫌でも目に入った。確か今日は朝練を体調不良か何かで休んでいたのを覚えている。
チュッパチャプスを舐めながらドS部長を眺めていると近くにいた女共が「あっ、赤司様だー」なんて声高く言うから、ギョッと目を見張る。

は?様……?

きゃいきゃい騒ぐ奴らをゴミみたいな目で見送って、うわーないわーと内心思う。
あの鬼メニュー組んでいる赤司がどこがいいか知らないが、黄瀬みたいにアイドル視されているのは小耳に挟んだことはある。
が、中学生で赤司様って…。どこの少女マンガだ。
半開きの目でもう一度赤司を見下ろすと歩く途中何人か女子に声をかけられていた。

へえー。あの赤司が、ねえ…。

大して興味無さそうに見つめていたが男を眺めてもおもしろいはずもなく、目を逸らして教室に入った。
確かに男にしてはきれいといえばきれい。黄瀬もムカつくけれどきれいの部類に入るだろうが、赤司は何となく違った。
おそらく、人間ではない美しい何かと捉えられているのだろう。

窓際のいちばん後ろの席に座ってホームルームを適当に聞き流して考えていると、隣からさつきが耳打ちしてきた。
「ねえねえ、大ちゃんあのね。悪いんだけど急用ができちゃって、これを赤司くんに届けてほしいんだけど」
見ると、何かの書類らしい。
「はあ?何でオレが。緑間にでも頼めよ」
「みどりんも昼休みだめなんだよー。お願い!」
「……チョコパイ3個な」
「ありがと、助かる。大ちゃんが届けるってはるとすッッッごく不安なんだけど、ちゃんと届けてよね」
「チョコパイ5個な」

分厚そうで重要そうな書類の束を受け取るとめんどくさそうに机の中にしまう。イチゴ牛乳を鞄に隠して飲んでいると、またさつきが声をかけてきた。

「あ。そういえば赤司くんで思い出したけど、最近彼女ができたらしいんだってさ。何か知ってる?」
「っぶ…は!!!?!?」
飲んでいたものを盛大に口から吐き出してバッグを真っ白にさせるとさつきに向き直った。
「うっわ、大ちゃんきったな〜。さいてー」
「ちょ、何それ。気になるから詳しく聞かせろ」
赤司様と騒がれてるアイツに彼女ができたなんて、一体どんな女だ。美人か、ボンキュッボンか、清純か。どれだ、気になる。
「だから私は知らないんだってば。友達に赤司くんの追っかけをやってる子がいるんだけど、その子の情報なんだよね」
おい待て、追っかけってオイ。ツッコむべきかこれ。
「ま、知ってても大ちゃんに言ったら噂広がりそうだから言わないけどね」
「つか、お前が知らないんじゃオレが知るわけねーだろ」
あれだけきれいな顔していれば女が放っておくわけない。女を選び放題な赤司のことを考えていると、突然マイちゃんが赤司にめろめろな図が思い浮かんでちょっとムカつく。
書類を渡す時にでも彼女のことを聞くかと思い至って後は窓際をぼーっと見つめた。
「やっぱりかー。うーん、私も気になるから知りたいんだけど赤司くんが相手じゃ中々手に入らなくてね。…って、大ちゃん聞いてる?」

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