漆黒の着物が目に入って、何の気なしに羽織ってみる。体格の違う相手のそれは当然ながら桃太郎には少々大きい。袖も裾も引き摺るような有り様で、同じ男として情けなくなり、ため息を吐く。吐いた分の空気を吸い込めばそれと共に着物に染み付いた彼の匂いが鼻腔を擽り、なんだか酷く安堵した。





20120522
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