ふざけんなふざけんな、お前はなんでそんな勝手すんだよ、置いて行かれる10代目とか野球バカとかボクシングバカとかその妹とかうるさいあの女とか、リボーンさんとかあと学校のやつらとかッ…!咳き込みながら、わたしの腕を強く強く強く掴んで、走って来た獄寺がそう言った。

「っ、…痛い」

無理矢理獄寺はわたしが背負っていた小さな鞄を取り上げて、何処行くつもりだったんだよ!と肩を掴む。少しは静かに出来ないの、ここ空港だよ?手で肩にかかったその手を払って、はっと息を吐いた。チラチラと搭乗していくおばさんがわたしたちの方を見て行く。肩をすくめてまた違う人、おじさんがオーと声を上げた。それから聞いたことのない言語を投げかけてわたしの顔をのぞき込む。そこでわたしは一か八か、地元の本屋で覚えて来た付け焼き刃の行き先の言語で「いいえ」と答えた。それを聞くなりそのおじさんはいぶかしげに頷いて、搭乗ゲートをくぐっていった。

「何処だっていいでしょ」

っざけんな、お前…!今度はわたしの腕をギリと音がしそうなほどに握って睨んだ。目には涙が浮かんでいるみたいだった。置いて行かれる人間のこと考えたことあんのかよ!10代目だって野球バカだって心配してんだぞ!そう言った獄寺は他にも、と付け足そうとしていたけれどわたしはそれを遮って少し声を荒げた。

「じゃあ獄寺あんたはっ」

どんと倒してわたしがくぐるはずの搭乗ゲートから少し離れた椅子に獄寺を座らせた。背中を軽く打ち付けられた獄寺はその反動で顔を上げた。さっきからツナや山本のことばっかり!あんたはどうなの、胸ぐらを掴んで睨めば、獄寺は一気に勢いを無くした目から視線をわたしに向ける。それから一瞬その視線をどこかにやって、やっと口を開いた。

「…ッ好き、だ」

悔しそうに下唇を噛んで、逃げようとしたその目をわたしはぎゅっと押さえてその上から一度口付けた。消えたらどうしようとか思ってた、と獄寺はたどたどしく言って力の抜けたわたしの手を襟元から外した。それからわたしは言ってやった、罵声を浴びせる勢いで、ただ並べる。バカ、答えになってないって。あーあ、それにチケットも無駄になっちゃったじゃん。安くないんだよ、飛行機のチケットは。獄寺が好き。


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